<社説>新聞週間 本質に迫る「真実」伝える


この記事を書いた人 琉球新報社

 15日から新聞週間が始まっている。今年の代表標語は「新聞で見分けるフェイク 知るファクト」だ。

 フェイク(偽)ニュースがはびこり、世界的にも深刻な影響が出ている。沖縄の基地問題を巡る偽ニュースも目に付く。不条理の続く状況を改善するため、沖縄の報道機関として、丹念な取材に裏打ちされた事実を発信していくことを改めて肝に銘じたい。
 偽ニュースが取りざたされ始めたのは昨年の米大統領選からだ。誤った情報が投票行動を左右したともいわれる。
 トランプ大統領は就任後も、自らを批判するメディアを「フェイク」と切り捨てる一方、ツイッターで偽情報をたびたび発信している。
 日本でも、熊本地震の際にライオンが逃げたとのデマが流布した。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)全盛の時代、うその情報が容易に拡散されてしまう。
 沖縄に関しても虚報、誤報が飛び交う。2015年に自民党の勉強会で著名作家が「普天間飛行場は田んぼの中にあり、商売のために基地の周りに人が住み始めた」と事実誤認の発言をした。
 ネット上だけではない。1月には東京の地上波テレビが「反対市民は2万円の日当をもらっている」「反対市民が救急車を止めた」などと事実を曲げて放送した。県内のコミュニティーFMでも、事実に基づかない発言が一部の番組であった。表現の自由や民主主義を脅かす事態だ。
 政権が事実をゆがめる動きもある。昨年12月の名護市安部へのオスプレイ墜落がそうだ。墜落した機体はプロペラを上に向けた着陸モードではなく、前に向けた飛行モードだった。制御が利かない状態だったのは明白で、複数の軍事専門家も指摘している。
 だが、米軍も日本政府も「不時着水」と発表した。本紙は第一報から「墜落」と報道しているが、中央メディアの大半は、官の発表通り「不時着水」あるいは「大破」を使い続けている。事故の矮小(わいしょう)化に手を貸してはいないか。
 真実を見極め、権力を監視すべき報道機関としては看過できない問題だ。大本営発表を垂れ流し、国民を戦場に駆り立てた戦中の新聞の過ちを繰り返してはいけない。
 国際NGO「国境なき記者団」の報道の自由度ランキングで、日本は今年も昨年と同じ72位だった。10年の11位から大きく順位を下げている。特定秘密保護法施行や政府によるメディア規制強化が背景にある。権力を批判する力の低下も指摘される。
 「戦争の最初の犠牲者は真実だ」といわれる。権力を監視し、市民の知る権利を保障する。それが報道機関の最大の使命であり、責務だ。
 私たちは沖縄の地方紙として、県民の負託に応え、問題の本質に迫る「真実」を伝え続けていく。謙虚さを保ちつつ、希望ある未来に向けて読者と共に歩んでいきたい。