<社説>きょう衆院選 自らの政治課題に1票を


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 例えばこんな法案が出たらどうなるだろう。「若い世代は投票に行かないから、選挙権は40歳以上とする」

 個々人の考えはさておき、40歳以上の人たちが、国政で自分たち世代の考えをもっと反映させたいと願うなら賛成を示すだろう。そして法案は成立する。なぜなら年代別の投票率を見れば、圧倒的に40代以上の票が多く、国会議員はその世代の意向を無視できないから。
 仮定の話でしかない。しかし、若い世代が投票に行かないことで受ける損失はたびたび指摘されてきた。
 2016年7月の参院選は国政選挙で初めて18歳選挙権が施行された選挙だった。県全体の投票率は54・46%だったが、10代は46・77%、20代は37・98%、30代45・84%と下回った。投票率を引き上げているのは50代以上で、50代で6割超、60、70代で7割を超える。
 「若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?」の著書がある森川友義早稲田大教授(政治学)は14日付本紙のインタビューで「選挙に行かないことで若者は政府に払うお金より受け取るお金が少ない」と、世代間格差を指摘する。
 今回の衆院選は沖縄とこの国の行方を左右する重要な選挙だ。
 政権選択選挙と言われる衆院選でまず問われるのは現政権の評価だ。
 安倍政権は、安全保障関連法や「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法などを成立させた。森友・加計学園の問題では説明不足を批判された。さらに選挙後は憲法改正に向けた動きを加速させるとみられる。
 さらなる長期政権と憲法改正へ弾みをつけることも争点だ。
 沖縄では、政府が米軍普天間飛行場の移設先とする名護市辺野古への新基地建設の是非が最大の争点だ。
 県内小選挙区で辺野古移設に対する姿勢は二分され明確な争点となっている。オール沖縄勢力は「反対」、自公は日米合意に基づく辺野古への移設を掲げる。
 若い世代の中には、政治は遠い世界のものだと考えている人もいるだろう。昨年の参院選で本紙が18~19歳105人に実施したアンケートでも「自分には関係ない」「誰を選べばよいか分からない」という声が多くあった。
 しかし、関心のある分野を聞くと、基地問題が最多の約4割を占め、次いで子どもの貧困問題や待機児童問題などを含む「福祉・社会保障」、「経済」だった。関心のある分野、それがまさに政治課題だ。
 自らが考える政治課題で、候補者や政党がどんな考えを持つか。その訴えや人柄などに関する報道もその判断材料にしてほしい。
 若者の雇用や教育費の支援に薄いと言われる日本。それを変える一歩にするためにも1票を投じてみませんか。