<社説>「オール沖縄」3勝 それでも新基地造るのか


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を拒否する民意の根強さを改めて証明した。安倍政権が県民の意思を今後も踏みにじることは許されない。

 前回2014年の全勝には及ばなかったものの、1~3区で辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力が当選、当選確実とした。辺野古新基地を容認する自民党は1議席を獲得したが、3氏は選挙区で落選した。
 沖縄選挙区の最大の争点である辺野古新基地建設に反対する民意が上回ったことは、安倍政権の強硬姿勢に県民は決して屈しないとの決意の表れである。
 国土面積の0・6%の沖縄に、在日米軍専用施設の70・38%が集中していることはどう考えても異常である。米軍基地を沖縄に押し込めることは、沖縄差別以外の何物でもない。
 国は迷惑施設の米軍基地の国内移設を打ち出せば、反対運動が起きると懸念しているにすぎない。それをあたかも普天間飛行場の返還には、辺野古新基地建設が唯一の解決策であるかのように偽装している。県民の多くはそれを見透かしている。
 普天間飛行場の一日も早い返還には「辺野古移設が唯一の解決策」とする安倍政権への県民の怒りが選挙結果に表れたといえよう。
 安倍政権が民主主義を重んじるならば、沖縄選挙区で自民党は1人しか当選できなかった現実を真摯(しんし)に受け止め、新基地建設を断念するのが筋である。それでも新基地を造るなら安倍首相はこの国のリーダーとして不適格だ。
 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記する。この権利を県民は享受できていない。米軍基地から派生する騒音被害や墜落事故、米軍人・軍属の事件事故が後を絶たないためだ。
 それを改善するのが国の務めであり、政治家の果たすべき役割である。だが、安倍政権は明らかに逆行している。
 国の移設計画は老朽化した普天間飛行場の代わりに米軍に最新鋭の基地を与えるものでしかない。米軍機は県内全域を飛行し、深夜・早朝にかかわらず訓練する。新基地建設は沖縄の負担強化につながるだけで、負担軽減になることは一切ない。
 沖縄選挙区で自民党候補が当選したのは2012年衆院選以来、5年ぶりである。その時は3氏が当選したが、普天間飛行場の県外移設を求めていたことが大きい。
 沖縄にとって真の負担軽減とは何か。自民党は沖縄選挙区でなぜ苦戦を強いられているのか、安倍政権は自らに問う必要がある。
 自民党候補も沖縄の政治家としての在り方を考えるべきだ。沖縄の将来を見据えて党の政策を変えさせるのか、それとも党の方針に従うのか。政治姿勢が厳しく問われていることを自覚してほしい。