<社説>自公3分の2 大政翼賛政治を危惧する


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 森友、加計学園の「疑惑隠し解散」「説明責任なきリセット解散」と言われた衆院選は自民党の圧勝で終わった。

 自民、公明両党の議席は自民の追加公認を合わせて定数465の3分の2(310)を超え、憲法改正の国会発議も可能になる。しかし、比例代表の得票率を見ると、立憲民主党と希望の党を足せば自民を上回る。民進党分裂が自民圧勝を後押ししたようなもので「安倍1強」は強固ではない。政権が信任されたとして、再び強引な政権運営をすれば、たちまち求心力を失うだろう。
 選挙の結果、希望の党と日本維新の会を合わせると改憲勢力が国会全体の約8割を占めることになった。これまで安倍政権下で審議された一連の重要法案は、熟議をせず数の力で成立させてきた。特定秘密保護法、「共謀罪」法、安保関連法しかりである。改憲論議を性急に進めてはならない。
 衆院選前に共同通信が実施した全国電話世論調査は、安倍晋三首相の下での改憲への賛否では反対51・0%、賛成33・9%だった。投票で最も重視する点は「年金や少子化対策など社会保障」29・7%、「景気や雇用など経済政策」16・3%、「安全保障や外交」15・5%と続いた。「憲法改正」は8・9%である。
 小選挙区制度は当選者が1人で、第1党に有利な仕組みだ。多くの選挙区で野党候補が競合し、政権に対する批判票が分散したことが自民党に有利に働いたのは間違いない。民進党は選挙に勝てないと見て事実上解党した。議会政治の野党の役割を放棄したに等しい。
 このため今回は「自民・公明」「希望の党・日本維新の会」「共産・立憲民主・社民」の3極による対決の構図になった。「自民・公明」は3極対決のうち8割の選挙区で勝利している。1本化して1対1の構図に持ち込めなかった野党の責任は重い。
 さらに台風の影響で投票に行かなかった有権者は無党派が多いとみられる。組織力が弱く無党派頼みの新党に比べ、組織票を持つ自民、公明には投票率が下がるほど追い風になったのだろう。
 8月の内閣改造後の記者会見で安倍首相は「深く反省し、国民の皆さまにおわび申し上げたい」「国民の皆さまの声に耳を澄ます」と述べた。しかし、臨時国会冒頭で所信表明演説もせず、野党の質問も受け付けず、一方的に衆院を解散した。
 今回も衆院選後の会見で「今まで以上に謙虚で真摯(しんし)な政権運営に努めたい」と述べた。この言葉を100パーセント信じる国民が、どれだけいるだろうか。
 現憲法が体現してきた戦後の平和民主国家の歩みが揺らいでいる。戦前のような大政翼賛政治にならないように、主権者である国民は政治に目を光らせる不断の努力が求められる。