<社説>日産と神鋼の不正 法令順守の原点に戻れ


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 品質の高さで名をはせていた「日本のものづくり」に黄信号がともっている。

 日産自動車による新車の無資格検査と、神戸製鋼所による性能データ改ざんが明らかになった。いずれも日本の製造業をけん引してきた大企業だ。消費者の信頼を裏切る行為で、断じて許せない。
 今回の不祥事は組織ぐるみも疑われている。企業のコンプライアンス(法令順守)意識が希薄になっていないか。経営陣をはじめ全社的な意識改革を進め、早急に再発防止策に取り組むべきだ。
 日産は国の規定に反して、資格のない補助検査員に新車の最終検査をさせていた。違反を認識しながら、組織ぐるみで無資格検査に手を染めた疑いも残る。
 安全を確認する最終関門をおろそかにしたのは、自動車メーカーとして人命軽視と指弾されるべき事案だ。
 不祥事はこれだけにとどまらなかった。西川広人社長が9月29日に事実を公表した後も、国内4工場で無資格検査を続けていたことが発覚した。上層部の意向が現場に伝わらない組織だとすると病巣は根深い。
 日産は国内で販売する全車両の出荷を停止し、新たに約4千台のリコールを届け出る事態に至った。
 経営陣が現場を管理できていなかったのは問題だ。西川社長は「課長と係長のコミュニケーション不足が大きかった」と説明した。自らの責任は棚上げし現場に押し付けるかのような発言は、危機管理意識に欠ける。経営陣の責任は極めて重大である。
 神戸製鋼所は製品の性能データを改ざんしていた。当初はアルミニウムと銅製品だったが、その後、鉄粉、銅線、特殊鋼にまで拡大した。
 さらに、管理職を含む従業員が不正を隠蔽(いんぺい)する行為や、不正を報告しない妨害行為も明るみに出た。会社全体にモラル欠如と隠蔽風土が蔓延(まんえん)していたとの指摘もある。
 両社とも自社の不祥事を経営陣が把握していなかったと弁明している。企業統治が利いていないのではないか。
 日本を代表する両企業の不祥事は、世界に「メード・イン・ジャパン」への不信感となって広がっている。米有力紙はタカタの欠陥エアバッグ問題とも絡め「日本の自動車産業が『困難な時期』を迎えている」と報じた。
 ボーイング社など海外メーカーや米司法省は調査に乗り出した。欧州航空安全庁(EASA)は神鋼への調達を控えるよう勧告している。
 日本のものづくりに対する信頼を根底から揺るがす事態だ。製造現場にモラルの低下がはびこっているとは考えたくない。
 企業が法令を順守するのは当然のことだ。両社とも消費者のために誠実に真摯(しんし)にモノをつくるという原点に立ち返ってほしい。まず原因を徹底究明し、消費者の信頼を取り戻す努力を重ねるべきだ。