<社説>琉大軍事的研究禁止 大学としての矜持示した


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 琉球大学が防衛省の安全保障技術研究推進制度などに対する「対応の基本方針」を発表した。軍事利用を直接目的とする研究や、軍事を所管する国内外の公的機関から資金提供を受けた研究を行わないことを打ち出した。

 日本学術会議が今年3月に発表した声明は防衛省の制度を「政府による介入が著しく、問題が多い」などと指摘し、過去の戦争協力への反省から軍事研究をしないことを掲げた1950年と67年の声明を「継承する」とした。
 だが、禁止にまでは踏み込んでいない。琉大の基本方針は明確に禁止を打ち出しており、先駆的である。大学としての矜持(きょうじ)を示したことを、県民として誇りたい。
 防衛省の制度は軍事応用も可能な基礎研究に助成する。2015年度に創設された。防衛省側で大学や独立行政法人、民間企業の研究者からの提案を審査し、委託研究費を配分する。
 研究成果は国の防衛や災害派遣、国際平和協力活動などで用いる装備品の開発につなげるほか、民生分野でも活用されるとしている。
 装備品には兵器が含まれる。兵器開発に直結しない基礎研究であっても、研究成果は将来的に兵器開発に使われる可能性がある。民生分野で活用されるにしても、防衛省の制度である以上、主目的は兵器の開発である。
 兵器開発につながる恐れのある研究に携わることは、研究者として厳に慎むべきである。
 だが、17年度は助成制度に104件の応募があり、14件が採択された。このうち大学からの応募は22件で、研究代表者に大学は選ばれなかったものの、採択された研究課題に4校が協力する。憂慮すべき事態である。
 琉大の大城肇学長は15年8月、防衛省の助成制度に対し、学内での実施を差し控えるべきだとする考え方を発表し、応募を事実上禁止してきた。基本方針を決定することで、大学として戦争には協力しない姿勢を明確にした。
 沖縄戦を体験した地にある大学にとどまらず、日本の大学としての範を示したことを高く評価したい。
 共同通信が今年2月に実施したアンケートで、約4割の大学が日本学術会議の軍学分離声明を「堅持するべきだ」とする一方で、防衛省の助成制度に対する大学としての対処方針や内規があるとした大学は約2割にとどまった。
 多くの大学が琉大に続いてほしい。
 助成制度が新設された15年度の予算は3億円、16年度は6億円だったが、17年度は110億円と大幅に拡大した。その一方で、政府は大学への補助金を削減し続け、研究費のかさむ理系学部の多くが資金不足に悩んでいる。
 研究者の良心を発揮することで、現状を改めたい。琉大の取り組みがその後押しになることを期待したい。