<社説>森友過大値引き 首相は国会で説明尽くせ


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 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を会計検査院が調査したところ、国のずさんな算定で値引きが最大約6億円過大となり、国が損を被った可能性が浮かび上がった。税金の無駄遣いをチェックする機関からも国有地のごみ撤去費の積算に疑義が突き付けられた。安倍晋三首相は国民が納得できる説明をする重い責任がある。

 森友学園が建設を進めた小学校は安倍昭恵首相夫人が一時、名誉校長に就いていた。夫人付の政府職員が国有地に関して財務省担当者に問い合わせていた。首相との関係性を含めて疑惑が噴出した。
 国会で野党が追及したが、安倍首相は「印象操作だ」と発言し、その後も夫人の国会招致など疑惑解明への協力をかたくなに拒んだ。さらに臨時国会の質疑に応じないまま衆院を解散した。
 加計学園問題を含めて多くの国民が疑問を持つ。解散直前に共同通信が実施した世論調査では、森友、加計学園問題を巡る政府の説明に納得できるかどうかについて「できない」が78・8%で圧倒的に多かった。「できる」はわずか13・8%だった。衆院選は大勝したが、これで疑惑が晴れたわけではない。
 安倍首相は記者会見で「会計検査院が検査に着手しており、指摘があれば真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と明言していた。
 検査院の調査によると、森友学園の国有地購入に際し、ごみ撤去費の見積もりを担当した国土交通省大阪航空局は、学園の「地下9・9メートルまでごみがある」との申告を受け、詳細に調べ直さないまま撤去費を約8億2千万円と算出した。財務省近畿財務局はこの額を評価額の約9億5千万円から値引きした。
 しかし、検査院が資料を検証したところ、ごみの混入率は30%程度で、撤去費は約2億円にとどまり、多くても4億円余りだったという。
 さらに撤去費に関する文書や国と学園のやり取りの記録は破棄されていた。
 こうしたずさんな算定が、なぜ二つの省庁間で認められたのか。なぜ学園との交渉過程で財務局が買い取り可能な金額を尋ねていたのか。なぜわずか2年前の記録が破棄されたのか。
 多くの疑問に答え、背景事情も含めた説明がなされない限り、国民の納得は得られない。
 しかし、安倍首相は野党が求める臨時国会の召集には応じない方針で、11月1日開会の特別国会の延長のみで乗り切る考えだ。
 さらに国会での野党の質問時間の削減を検討している。与党と野党で時間を「2対8」に配分する慣例をやめ、国会勢力順にすべきとしている。
 真に「説明責任」を果たすなら、臨時国会の召集に応じるべきであり、国会の質疑にも誠意を持って応じるべきだ。事をうやむやにしては国民の理解は得られない。