<社説>米軍F35配備強行 いびつな状態容認できぬ


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 甚大な被害を受ける地元の反対が一顧だにされない、いびつな状態は断じて容認できない。米軍、そして米軍の横暴な振る舞いを許す日本政府に強く抗議する。

 米空軍は最新鋭ステルス戦闘機F35Aの嘉手納基地への6カ月の配備を始めた。
 嘉手納町と沖縄市、北谷町で構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」は、日米の関係機関にF35Aを展開しないよう求める抗議文を郵送していた。それを無視し、配備を強行したのである。強く抗議する。
 F15戦闘機などの常駐機に加え、外来機の飛来や一時移駐などが常態化している嘉手納基地の周辺住民は騒音被害に苦しめられている。F15の騒音を大幅に上回るF35Aの6カ月の配備で騒音がさらに増すのは明らかだ。
 米軍岩国基地所属のF35Bが6月、嘉手納基地に相次いで飛来した際には、嘉手納町屋良で100・6デシベルを記録した。電車が通るときのガード下に相当する騒音である。住民からは「うるさくて耳が痛い」などの苦情が町に寄せられた。
 嘉手納基地に暫定配備されたF16戦闘機が訓練を始めた5月8日の前後51日間の騒音発生回数などを嘉手納町が比較した結果、町全体の騒音発生回数は50・7%増の6698回、苦情件数は1・8倍の94件に上った。
 特に騒音が激しい屋良地域の騒音発生回数は、42・6%増の3707回を数えた。数値別では100デシベル台の測定回数が4倍の32回、騒々しい工場の中のうるささに相当する90デシベル台が2・1倍の442回と高い数値の騒音発生回数が激増した。異常事態である。
 安倍晋三首相は「基地負担の軽減に全力を尽くす」とこれまで言ってきたが、これが実態である。負担軽減に逆行するF35Aを配備させないことで、約束を果たすべきだ。
 看過できないのは政府の対応の違いである。岩国基地へのF35B配備の際は、地元の理解を得ることを目指した。防衛政務官らが地元に赴いて概要を説明し、知事や市長らの承認を得た上で今年1月に配備している。
 一方、沖縄では三連協の反対を無視して問答無用に配備を強行している。6カ月の期限付き配備ということが対応の違いの理由にはならない。
 安倍政権はこの間、米軍基地問題で「地元に丁寧に説明し、理解を求めながら進める」「沖縄に寄り添う」などと繰り返してきたからだ。言葉だけではなく、実行することで、恥ずべき二重基準を改めるべきだ。
 F35A計12機と関連要員約300人はユタ州の第34戦闘飛行隊から嘉手納基地に派遣される。6カ月後に去っても再び配備される可能性は十分ある。嘉手納基地に再度配備されれば、これまで以上の基地被害が固定化される。米軍の都合で、県民が被害を受ける状況は許されない。