<社説>県功労者に10氏 その道の目標にしたい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 文化の日のきょう、2017年度県功労者10氏の表彰式が行われる。

 今年は施政権返還から45年。10氏は戦後の混乱、米国統治下で自治権が制限された時代を乗り越え、一貫して沖縄県の振興、発展に貢献した。業績の一つ一つは県民の財産といえる。その労苦に敬意を表し、心から祝福したい。
 地方自治は元県知事の稲嶺恵一さん、元衆院議員の古堅実吉さん、元副知事の比嘉幹郎さんの3人。
 稲嶺さんは経営者を経て県知事を2期務めた。知事時代に沖縄サミットが開催された。「魚より釣り具を」と基地収入に頼らない自立型経済構築を目指し観光の振興、企業誘致に尽力した。沖縄科学技術大学院大学の構想着手など大きな足跡を残した。
 古堅さんは米国統治時代に立法院議員、沖縄人民党書記長として、瀬長亀次郎さんと共に自治権拡大に尽力。衆院議員時代も「核も基地もない平和で豊かな沖縄」の実現を目指して政治活動した。
 比嘉さんはカリフォルニア大学留学時代、政治学者でアジア研究の大家ロバート・スカラピーノ教授の助手を務めた。日本復帰前に「沖縄自治州」を主張。政治学者を経て西銘県政で副知事に就任、研究と実務の両面から地方自治の確立に貢献した。
 教育部門の藏根芳雄さんは、県社会教育委員の会議議長、県社会教育委員連絡協議会会長を歴任、県教育の発展に貢献した。
 文化・学術部門はジャーナリストの宮城鷹夫さん。県文化協会や那覇市文化協会の結成に尽力するなど、文化振興活動に精力的に取り組んだ。
 伝統芸能・工芸の八木政男さんは県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者。大阪にいた異父兄の大宜見小太郎さんに呼ばれ役者に。沖縄芝居の名作「丘の一本松」で小太郎さんが渡久地小の主(すー)、八木さんは息子の良助役を演じた。琉球歌劇の普及と後継者の育成に尽力した。
 スポーツ振興の金城眞吉さんは興南、沖縄尚学の両高校で44年間指導。国際ボクシング殿堂入りしボクシング史に刻まれる具志堅用高氏を筆頭に数々の名選手を育てた。
 社会福祉は宮城正雄さんと神谷幸枝さんの2人。宮城さんは元沖縄県人会兵庫県本部会長。終戦後の沖縄への帰還者の援護活動や結核患者の本土病院受け入れなどに尽力した。神谷さんは元県デイサービス協議会副会長。デイサービス事業やグループホーム事業のさきがけとなった。
 平和・人権推進、社会貢献は元県生活改善連絡研究会会長の松田敬子さん。地域の婦人活動で生活改善活動のけん引役として尽くした。
 功労者の歩んできた道は、県民一人一人に大きな示唆を与え、それぞれの分野の目標である。沖縄はまだまだ課題が山積している。県民に対して叱咤(しった)激励と一層の力添えを願いたい。