<社説>降下訓練直前通告 米軍の野放図許されない


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 米空軍がうるま市の津堅島沖で、パラシュート降下訓練を実施した。県とうるま市が反対しているにもかかわらず、訓練が強行された。しかも県側に訓練が通告されたのは、実施のわずか2時間前だ。

 パラシュートが降下した時、周辺海域には民間漁船が航行していた。訓練実施を知らなかったのだろう。極めて危険だ。県民を愚弄(ぐろう)するにもほどがある。
 1996年の日米特別行動委員会(SACO)では、読谷補助飛行場でのパラシュート降下訓練を伊江島に移転実施することで合意した。しかし米軍は合意以降も嘉手納基地や津堅島沖での訓練を強行している。
 97年以降に津堅島で訓練が実施されたのはこれで15回だ。うち8回は今年の実施だ。つまり19年間で実施された数を上回る訓練が今年だけに集中実施された。米軍が津堅島沖での訓練を恒常的に行う方針を決めたとしか思えない。言語道断だ。
 海兵隊も同じ日に宜野座村城原区の集落近くにあるキャンプ・ハンセン内のヘリパッドで、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ3機と大型輸送ヘリCH53Eの離着陸訓練を実施している。
 オスプレイは昨年12月に名護市安部で墜落した。CH53Eは先月11日に東村高江で炎上事故を起こしている。事故を起こしても上空を飛び続ける。沖縄では米軍のやりたい放題がまかり通っている。
 それを許しているのが日本政府だ。米軍の嘉手納基地での降下訓練について、政府は日本側が例外的に認める訓練に該当しないとして「承服できない」との立場を取っている。このため県は7月の抗議の際、8月に予定されていた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で議題に取り上げるよう要求した。
 しかし2プラス2で日本側は地元の「懸念」を伝えただけだ。正式な議題というより言及しただけにとどまり、共同発表にも盛り込まなかった。なぜ米側に遠慮するのか。あまりの卑屈な態度にあきれるほかない。
 米軍が津堅島沖で訓練を急増させたり、直前になって通告したりしているのは、日本政府の弱腰姿勢を見抜いているからだ。このままだと訓練拡大は避けられない。
 先月末には海軍が読谷村の都屋漁港の沿岸約1キロ先でヘリによるつり下げ訓練を実施した。米軍は村側に一切事前連絡していない。現場海域は漁船が日常的に行き交う場所で、定置網やジンベエザメのいけすも設置されている。
 もはや沖縄全域が米軍の訓練場と化している。読谷村では1965年、パラシュート訓練で投下されたトレーラーに小学5年の女児が押しつぶされて命を落とした。同じ悲劇を繰り返してはいけない。これ以上、米軍の野放図な行動を許すわけにはいかない。