<社説>辺野古新護岸着工 県民は決して屈しない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄には民主主義を適用しないとの宣言に等しい。衆院選で示された辺野古新基地建設反対の民意を一顧だにしない安倍政権に強く抗議する。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に向けて、沖縄防衛局が新たな護岸2カ所の造成工事に着手した。
 衆院選沖縄全4小選挙区のうち、新基地建設反対を掲げた3氏が勝利した。その約2週間後の新たな造成工事着手は、沖縄の民意を無視するとの安倍政権の意思表示にほかならない。その強権政治を断じて認めることはできない。
 防衛局は4月から埋め立て予定区域の北側で護岸工事を実施している。11月に入って新たな造成工事に着手したことは、トランプ大統領の来日と無関係ではなかろう。
 日米首脳会談の日に造成工事に着手することで、新基地建設が着々と進んでいることを、トランプ氏にアピールする狙いがあるはずだ。
 トランプ氏から褒めてもらいたいといった安倍晋三首相の卑屈な考えが、はっきり見える。安倍首相が優先すべきはトランプ氏ではない。過重な基地の負担を強いられている県民でなければならない。
 安倍首相はこの間、「政府として基地負担軽減のため、一つ一つ確実に結果を出していく決意だ」などと述べてきた。沖縄の米軍基地負担軽減に取り組む姿勢を強調するが、やっていることは逆である。安倍首相の言葉を信用する県民はいまい。
 そもそも、民意を踏みにじっての負担軽減などあり得ない。何が沖縄にとって負担軽減になるのかは、県民自身が決めるものである。そのことを安倍首相は全く分かっていない。
 琉球新報社が9月に実施した世論調査では80・2%が政府の推し進める県内移設に反対している。5人に4人が新基地建設が負担軽減にならないと考えていることを、安倍首相は直視すべきだ。
 2012年衆院選では新基地に賛成する自民党の4氏が沖縄選挙区で落選し、九州比例区で当選した。だが今衆院選では選挙区、比例区での当選は2氏にとどまり、新基地賛成派は2人減った。選挙結果も新基地建設を断念し、普天間飛行場を即時閉鎖することが県民の望む負担軽減策であることを示している。
 辺野古沖で希少サンゴが見つかり、県は工事を停止して保全対策を県と協議することなどを防衛局に求めている。だが防衛局は「工事を停止する必要はない」と拒否した。
 にもかかわらず、菅義偉官房長官は着手後の記者会見で「周辺環境などに十分配慮した上で工事を進める」と述べた。環境に配慮するなら、まず話し合うことである。「口先政治」がまかり通る安倍政治を許してはならない。
 県民が新基地建設反対の民意を何度示しても、安倍政権は無視し続けている。だが県民は決して屈しない。