<社説>米兵飲酒死亡事故 これではあしき無法者だ


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 飲酒していた在沖米海兵隊員の男が運転する米軍トラックと軽トラックが衝突し、軽トラックを運転していた男性が死亡した。米兵からは基準値約3倍のアルコールが検出された。亡くなった男性の遺族の気持ちを思うとやりきれない。

 事故現場は那覇市泊の国道58号の交差点だ。捜査関係者によると軽トラックは右折しようとし、米軍トラックは直進していた。信号は赤で右折可能の表示が出ていたという。この通りなら、軽トラックは信号に従って右折し、米軍トラックが信号を無視したことになる。
 米兵は公務外に事故を起こしていた。しかし運転していたトラックは米海兵隊の公用車両だ。なぜ飲酒をしていた米兵が米軍の管理所有している公用車両を簡単に持ち出すことができたのか。米軍の管理体制がずさんだったというほかない。
 今年に入って、米軍関係者の飲酒運転の摘発は少なくとも16件ある。うち5月に摘発された空軍兵は読谷村で女性を事故で負傷させたのに逃走していた。このほか飲酒した米兵が女性を殴打したり、民家の屋上に無断で侵入したり、タクシーを無賃乗車したり、飲酒検知を拒否したりした事件が起きている。
 米軍は午前1~5時の外出禁止などを定めた行動指針「リバティー制度」を定めている。しかし今年の飲酒運転、飲酒絡みの事件の摘発の半数以上が「リバティー制度」に違反している。米軍は自らを「良き隣人」とうたう。しかしこれでは「あしき無法者」ではないか。
 在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は今月16日の会見で、次のように誓っていた。米軍属女性暴行殺人事件の裁判員裁判が始まったことに関連し、事件後の米軍関係者による事件・事故について「飲酒運転を含め大きく減少している。私の目標は不祥事をゼロにすることだ」と話していた。
 「ゼロ」を誓った3日後に、部下の兵士が飲酒運転による米軍トラックに乗った悪質な危険運転致死事件を起こしている。在沖米軍の統治機能が破綻しているとしか思えない。もはや「ゼロ」を実現する方法は米軍の沖縄からの撤退以外にないのではないか。
 ニコルソン氏は今回の事件を受け、外務省沖縄事務所の川田司沖縄担当大使に謝罪した。米海兵隊太平洋基地司令官が20日に県庁を訪れるという。
 私たちは事件、事故が起こるたび、米軍から謝罪や再発防止を誓う言葉を幾度も聞かされてきた。それでも事件、事故は繰り返し起きている。取り繕うだけの言葉など、もう聞きたくない。
 県民が求めているのはごくささやかなことだろう。平和に暮らすということだ。これ以上、日々の生活を脅かさないでほしい、安心で安全な暮らしを返してほしい。