<社説>容疑米兵に「同情」 海兵隊トップ発言撤回を


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 あまりにも傲慢(ごうまん)で当事者意識に欠ける発言だ。

 米海兵隊トップのロバート・ネラー米海兵隊総司令官が、那覇市で飲酒運転死亡事故を起こした在沖米海兵隊員に対し、責任について言及せずに「深い同情を感じている」と述べた。ネラー氏は「(事故は)彼の意図ではなかった」とかばうような発言もしている。
 在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官は、翁長雄志知事に何度も「謝罪」という言葉を口にし、再発防止に全力を尽くす姿勢を示した。だが肝心の海兵隊トップがこの発言である。決して看過できない。ネラー氏に発言の撤回と明確な謝罪を求める。
 今回の事故は、21歳の海兵隊員が飲酒の上、勤務時間外に公用車を持ち出し、会社員の男性が運転する車に衝突、男性が命を奪われた。
 明らかに飲酒運転防止に向けた米軍の取り組みは不十分である。
 県警によると、米軍人や軍属など米軍関係者の県内での飲酒運転の摘発件数は、2014から16年まで年平均54件(飲酒運転摘発全体の3・5%)となっている。
 米国の国立アルコール乱用・依存症研究所が03年にまとめた若年層の飲酒に関する調査によると、18-25歳の米海兵隊員の多量飲酒率は35・4%で、同年代市民の約2倍に達している。報告書は「多量飲酒は米軍の重大な問題」と指摘している。事故が繰り返されていることから、一時的な飲酒制限では解決しない。
 飲酒して公用車を使用していたという事実は、米軍の管理態勢に問題があることを示している。
 県民の記憶に数々の米兵がらみの事故が刻まれている。沖縄が米国統治下にあった1963年2月28日、信号を無視した米軍トラックが上山中学校1年の男子生徒をはねて即死させた。だが運転していた米兵は軍法会議で無罪となった。
 70年には糸満町(現糸満市)で、酒酔い運転の米兵車両が女性をれき殺する事件が起きた。犯人は軍法会議で証拠不十分で無罪となり、不条理な判決に住民の怒りは頂点に達し、コザ騒動の引き金になった。
 ネラー氏は「私の知る沖縄の多くの人々は、非常に大多数のアメリカ人は良き隣人」と理解しているとも述べている。だが、その認識を改める必要がある。
 知事がニコルソン氏に指摘したように「『綱紀粛正、再発防止に努める』と言っても、県民は疲れ果てて何の信用もできない。とても『良き隣人』とは言えない。県民は『もう勘弁してくれ』という気持ちだ」というのが的を射ている。
 県は日本全体で米軍基地の分担を求めている。繰り返される米兵の事件・事故を防ぐ抜本的な対策は、海兵隊の撤退である。