<社説>県内47%人手不足 雇用の質と生産性向上を


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 沖縄振興開発金融公庫と九州経済調査協会が実施した県内企業の人手不足に関する調査結果によると、308社のうち46・8%が正社員について「不足している」と回答した。3年前は25・8%で、21ポイントも上昇している。極めて深刻な人手不足状態に陥っている。

 日本銀行那覇支店が今月発表した9月の県内金融経済概況では、県内景気は50カ月連続で「全体として拡大している」と判断した。先行きも「引き続き拡大する可能性が高い」としている。県内は好景気に包まれている。
 調査結果では、人手不足によって「需要増への対応が困難」になっている企業が6割に上っている。好景気による事業拡大の機会が生まれているにもかかわらず、人材がいないことで、その機会を逃している。対策を急ぐ必要がある。
 南西地域産業活性化センターの調査によると、県内企業が必要としている雇用者数に対する不足数を示す「欠員率」は2017年4~6月期で4・3%に達している。09年7~9月期は1・46%だった。この調査でも人手不足の深刻化を裏付けている。
 その一方で9月の県内完全失業率は3・4%だ。仕事の数に対して労働者の数が余る「労働需要不足失業」はほぼゼロと解消されている。つまり求人側と求職側の希望や条件のミスマッチ(不釣り合い)が生じているのだ。
 内閣府が5月に発表した14年度の1人当たりの県民所得で、沖縄は212万9千円で全国最下位だった。労働者1人当たりが働いて生み出す物やサービスの価値「労働生産性」が沖縄県は全国平均の約7割にとどまっており、こうした状況が県民所得を引き下げている。人手不足の解消には労働生産性を高めることも必要だ。
 また県内では非正規求人の割合が高い。9月の正社員の有効求人倍率(原数値)は0・48倍で、全国平均1・00倍の半分以下にとどまっている。待遇改善など雇用の質向上も進めたい。
 企業側には雇用者の能力・資格に見合った賃金の提示や正社員としての採用、職場環境の改善を求めたい。求職側の資格取得の機会や職業訓練の拡充などの対策も必要だ。
 働き手の中心となる生産年齢人口(15~64歳)の減少にも目を注がなければならない。県内では全人口に占める生産年齢人口の割合は00年の国勢調査から低下し始めている。15年は00年に比べ7・2ポイント減の60・7%。33年後の50年には51・5%まで低下すると予測されており、長期的な取り組みも進めるべきだ。
 人手不足や低所得などの課題解決に取り組むため、国、県、経済団体、労働組合など県内20団体による「働き方改革・生産性向上推進運動」の発足式が22日に開かれた。政労使が一体となってさまざまな改善策を進めてほしい。