<社説>大企業の不正続発 顧客の信頼を裏切るな


この記事を書いた人 琉球新報社

 日本の大企業による不正がまた明るみに出た。非鉄大手の三菱マテリアルが子会社3社で製品の検査データ改ざんがあったと発表した。

 神戸製鋼所に続く不祥事で、戦後復興、経済成長を支えてきた「日本のものづくり」にひびが入っている。顧客の信頼を裏切る行為で、経営者の責任を厳しく問いたい。
 不正が発覚したのは三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウムの3社だ。問題の製品はゴムのシール材(パッキン)や銅製品などで、航空機や自動車、電力機器などに幅広く採用されている。
 出荷先は沖縄など全47都道府県の274社に及ぶ可能性がある。
 三菱マテリアルは安全性に関わる問題や法令違反は報告されていないとするが、顧客企業や消費者が安心できる十分な説明を重ねるべきだ。
 データ偽装も深刻な問題だが、それ以上に許せないのが不正の把握から公表まで9カ月間も放置していたことだ。
 子会社がデータ改ざんを把握したのは今年2月だったにもかかわらず、対象製品の出荷を止めたのは10月23日だった。親会社への報告はその2日後、さらに公表までには1カ月も要した。
 三菱マテリアルの竹内章社長は「出荷先の把握を優先したため」と弁解したが、到底受け入れられない発言だ。
 検査データ改ざんを承知しながら製品の出荷を半年以上も続けており、顧客の存在を軽視したとしか言いようがない。企業モラルが著しく欠如している。隠蔽(いんぺい)とのそしりは免れない。
 素材業界には、決められた水準を満たしていなくても顧客の了解を得て納入する「特別採用」という商習慣があるそうだ。これを悪用した疑いも残るが、社長は「調査中」を繰り返すばかりで、真相解明には至っていない。一刻も早い原因究明が求められる。
 ここ数年、製造業大手の不正が相次いでいる。なぜか。構造的な問題はないのか。
 2015年には東洋ゴム工業が建物の免震装置ゴムのデータを不正に書き換えた。16年には三菱自動車が燃費を実際より良く見せるためデータを改ざんした。
 今年は日産自動車とスバルが国の規定に反して新車を無資格検査していた。
 長内厚早大大学院教授(経営学)は背景に「技術力への過信」を挙げ、「日本の品質は高いので多少手を抜いても問題ないというおごりや甘えがあるのでは」と指摘する。
 国際競争や人手不足、コスト削減、経営多角化など企業を取り巻く環境は厳しい。これを言い訳にしてはいけないが、不正の相次ぐ底流に、企業環境の変化に伴う要因が潜んでいないか、経営や組織体質の再点検が急がれる。
 特定の企業だけの問題で終わらせてはならない。消費者の信頼を取り戻すためにも、産業界全体で問題を共有し、取り組む必要がある。