<社説>国有地処分見直し これで幕引きにならない


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 財務省は国有財産の処分手続きの見直し案を発表した。全ての随意契約で売却価格を公表する-などが主な内容だが、こんな当然のことを今までしていなかったことにあきれる。

 見直しの発端となった学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、財務省は当初、売却価格を公表しなかった。問題発覚後も「売却は問題ない」と繰り返し、積算根拠となる文書も破棄したと主張している。
 国民の財産を大切にするという基本をないがしろにした責任は重い。国は国有財産売却の基準を厳格にするとともに、森友学園への国有地売却の経緯を国会の場で明らかにすべきだ。
 処分手続きの見直しは森友学園への国有地売却が会計検査院から「ずさんだった」と指摘されたことを受けたものだ。
 検査院の調査によると、森友学園に売却された国有地は評価額9億5600万円から、地中で見つかったごみの撤去費約8億円が値引きされた。国土交通省大阪航空局は、学園の「地下9・9メートルまでごみがある」との申告通りに撤去費を見積もり、財務省近畿財務局はそのまま値引きした。
 しかし実際には、ごみの混入率は30%程度で、撤去費は約2億円、多くても4億円余だという。
 問題の土地を巡り、財務省は「適正な売却」と繰り返してきたが、報道では学園側が執拗(しつよう)に値引きを要求したとされる音声データが明るみになり、近畿財務局の担当者が学園側に買い取り価格を打診したなどの疑惑も出てきた。
 検査院が「公平性や競争性、透明性を確保し、十分な説明責任を果たすことが求められる」と指摘する国有地売却だ。記録文書も残していないとなれば、国民の不信は拭えない。
 財務省の見直し案は売却価格公表のほか、複数業者の見積もりを取って発注額の相場や技術提案の内容を確認して決める「見積もり合わせ」などの特例の場合の基準を明確化する。地下に埋蔵物があるなど特殊な状況では、費用を専門家に見積もらせ、有識者の点検を受ける。文書管理は保存期間の長い決裁文書に買い手との打ち合わせ内容などを盛り込むとした。
 しかし、こうした改善案で問題が幕引きとはならない。
 ずさんな算定がなぜ二つの省庁間でやすやすと認められたのか。なぜ財務局が買い取り可能な金額を買い手側に尋ねたのか。なぜわずか2年前の記録が破棄されたのか。安倍晋三首相の昭恵夫人が学園の名誉校長を務め、夫人付きの職員が財務省と学園側の連絡役をしたことが「特別扱い」を生んだのではないか。多くの疑問に答え、背景も含めた説明がない限り、国民は納得しない。
 見直し案以外にも国有財産処分の積算根拠も明らかにすべきだ。国会では森友問題の経緯の検証が求められる。行政のチェックは国会の役目だ。