<社説>天皇陛下退位日決定 皇室制度考える機会に


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 天皇陛下の退位日が2019年4月30日に決まった。翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。平成の時代が幕を閉じ、新たな元号が施行される。

 江戸時代後期、1817年の光格天皇以来となる逝去によらない代替わりに向け、政府は退位や即位の儀式の在り方を検討するなど準備を本格化させる。
 天皇退位は天皇が存命中に皇位を退くことだ。皇室典範は皇位継承を「天皇が崩じたとき」に限っており、明治時代の旧典範制定以降は認められていなかった。陛下は昨年8月、退位の意向をにじませたビデオメッセージを公表した。
 これを受け、政府は有識者会議を設置し、退位の是非や法整備の在り方を検討し、与野党も議論を開始した。今年6月、陛下一代限りの退位を実現する特例法が国会で成立した。陛下を含めて125代続くとされる歴代天皇で、今回退位が実現すれば59例目となる。
 天皇陛下は皇太子時代の1975年に初めて沖縄を訪れて以来、これまで10回来県している。琉歌を自ら詠むほど、沖縄への思いは深い。
 12年の誕生日会見で「沖縄はいろいろな問題で苦労が多いことと察しています」と述べられた上で「日本全体の人が皆で沖縄の人々の苦労している面を考えることが大事ではないか」と語った。基地の過重負担を念頭に置いたものと思われる。
 さらに「地上戦であれだけ大勢の人々が亡くなったことは他の地域ではない。そのことなども時がたつと忘れられていくということが心配されます」と指摘し、沖縄戦が風化していくことを案じた。
 政府は代替わりに向けた準備を本格化させる。昭和から平成への代替わり儀式では、明治期に策定されて戦後廃止された皇室令の一つ「登極令(とうきょくれい)」などを踏襲したことから、国家神道の色彩が濃い。
 このため憲法の政教分離規定に違反する疑いがあると指摘する大阪高裁判決も確定している。政教分離などを踏まえながら、時代に即した儀式の在り方をどう構築するのかが問われている。
 新元号の発表時期も含め、国民生活への影響にも配慮しながら、滞りなく進めてほしい。その中でも皇室の将来を見据えた議論を置き去りにしてはならない。秋篠宮家の長女眞子さまは来年11月に結婚し、皇籍を離れられる。
 退位特例法の付帯決議に「安定的な皇位継承」を確保するため、退位後に政府が「女性宮家」創設などを速やかに検討し、国会に報告するとある。皇族減少対策などは国民のコンセンサスを得ながら進めてほしい。
 今回の退位と即位の時期決定を受け、多くの国民の目が象徴天皇制について向けられた。ぜひこの機会を捉え、皇室制度の在り方について広く議論を深めたい。