<社説>北部2病院統合 課題克服し早期実現を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 翁長雄志知事は、県立北部病院と北部地区医師会病院の統合を進め、基幹病院を整備する方針を表明した。

 慢性的な医師不足を解消し、安定した医療体制の構築へ向け、一日も早い実現を求めたい。
 沖縄21世紀ビジョンの将来像に「誰もが生きがいをもち、十分な医療や福祉が受けられる沖縄」という項目が含まれる。今年3月に決定した「県地域医療構想」は、北部地域の定住環境を整備するためにも「安定的な医療提供体制を構築するための効果的な施策が喫緊の課題」と明示している。
 本島北部地域は、人口約10万人の医療圏に327床の県立北部病院、200床の北部地区医師会病院という同規模の急性期病院が二つあり、診療科も重なる。そのため医療提供体制が分散され慢性的な医師不足が続いている。2006年に県立北部病院の産婦人科が医師不足による休止に追い込まれた。
 このため14年には県の研究会が両病院の統合を提言した。さらに今年3月、北部市町村の首長、議会議長、女性団体代表、医療関係者は、翁長知事に対し「北部地域における基幹病院の整備を求める決議」と基幹病院整備を求める11万1039人分の署名を手渡した。
 決議は北部地域の医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、住民に寄り添った医療確保のために、両病院の統合・再編を訴えた。基幹病院の機能として(1)500病床の機能集約(2)多様な病気への対応(3)安心して産み育てられる地域貢献病院-などを求めている。
 2病院を統合することで、県立北部病院で1回当たり15時間半に及ぶとも指摘される当直勤務の回数を減らし、医師の負担を軽減できる。県立北部病院の医師らの過重労働について労働基準監督署から是正勧告が出されており、勤務改善は喫緊の課題だ。
 また、中南部への患者の流出が進み症例が少なくなることで若手医師が辞め、医師不足がさらに患者の流出を生む悪循環が指摘されている。統合することにより、幅広い症例を集約することで医師の研修を充実することができる。
 一方、統合に伴う課題は山積している。県は両院の財産の取り扱いや職員の身分など、約50項目にわたる「整理すべき課題」を抽出し、今年3月、関連機関や北部市町村会などに提示した。
 特に、北部地区医師会病院は03年に負債が約61億円に膨らみ、経営破綻の危機に陥った経緯があるため、北部地区医師会の借入金についての取り扱いは大きな焦点となる。さらに職員の身分といった問題もある。
 健康と豊かな生活を送るために医療の充実は欠かせない。地域によって医療体制に差があってはならない。県と医師会病院、北部12市町村には、山積する課題を克服し、合意形成を求めたい。