<社説>NHK受信料「合憲」 公共放送の責務自覚を

 最高裁はNHK受信料制度は合憲と初めて判断した。テレビがあれば受信契約を結び、受信料を支払う法的義務があると指摘。テレビを設置した時点にさかのぼり負担する義務があるとした。

 しかし、視聴者とNHKの関係は単に支払う、受け取るという関係ではない。公共放送はあくまでも国民の信頼によって成り立つ制度であり、受信料の額や政策など公共放送を支える視聴者の意見を取り入れる仕組みが必要だ。NHKは視聴者の公共放送の重い責務があることを忘れてはならない。
 訴訟では「受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばなければならない」と定めた放送法64条1項の解釈などが争点となった。訴えられた男性側は「法的拘束力のない努力規定。支払う必要はない」と主張。支払いの強制は契約の自由を侵害し、違憲だと主張していた。
 最高裁大法廷は、受信料制度について「NHKに国家機関などからの影響が及ばないようにし、広く公平に負担を求める仕組みだ」として、「制度は国民の知る権利を充足するために採用され、表現の自由を確保するという放送法の目的を達成するために必要で合憲」とした。
 ただし、現行の受信料制度を疑問視する意見もある。電気や水道、ガスなどの公共料金は基本料と従量制で料金が決まる。しかし、NHKの受信料は見た、見ないにかかわらず一律定額となっている。利用状況に応じた料金設定があってもいいだろう。
 NHKは訴訟で、国家から独立した形で、安定的な財源を確保するために受信料制度は不可欠だと主張した。しかし、国家からの独立を疑問視したくなる事態も起きた。
 2013年11月、安倍晋三首相は、自身への支持を公言する作家百田尚樹氏らをNHK経営委員に任命した。経営委が会長に選んだ籾井勝人氏は14年1月の就任会見で「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と述べ、政権と歩調を合わせる発言をした。15年2月には「従軍慰安婦の問題は政府のスタンスが見えないので放送は慎重に考える」などと発言し「自ら放送の自主・自律を投げ捨てる」として批判された。
 NHKが政府の意向に沿うような偏った番組を放送した場合、視聴者はどのようにして意思表示すればいいのか。
 現行の放送法上、視聴者は国会によるNHK予算の承認という間接的な手続きでしか運営に関与できない。受信料不払いは、視聴者の直接的な意思表示という側面もある。実際、職員の不祥事が相次いで発覚した04年以降支払い拒否が急増した。
 テレビを設置した時点で契約義務があるというのなら、主要先進国のように、政府ではなく市民の代表を含む独立行政委員会が放送政策を決める制度の導入などを検討すべきである。