<社説>新基地港湾使用 生活影響明白で不許可を


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、港湾施設の使用申請が相次いでいる。これに対して県などは厳しい判断に迫られた。

 県は9月4日に国頭村の奥港、12月7日に中城湾港の使用を許可した。県から本部港の管理を委託されている本部町も10月17日に同港の使用を許可している。
 奥港は台船が護岸建設の石材を海上運搬するための岸壁使用で、本部港は岸壁に加え、石材仮置き場としての使用だ。中城湾港は石材運搬の台船を引く船の給油などの目的で接岸する。いずれも新基地建設の工事に関係する船が港を使用することになる。
 新基地建設阻止を公約に掲げて当選した翁長雄志知事は「あらゆる手段を使い、新基地建設を阻止する」と繰り返し口にしてきた。
 このため県政が港の使用を許可したことに対して、知事の言行不一致との強い批判が起きている。知事が「あらゆる手段」と言っている以上、批判は当然ともいえる。
 使用を許可した県にも言い分がある。港湾法第13条に「何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取り扱いをしてはならない」と記されているからだ。
 さらに地方自治法第2条では「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」と定めている。行政の立場として、許可せざるを得なかったというのが県の立場のようだ。
 しかし奥港については許可を出した時点とは状況が大きく変わっている。11月13日に初搬入があった際、砕石を積んだダンプカー50台が静かな集落を通り、台船に砕石を積み下ろした。
 ダンプカーによる振動、粉じん、騒音などを懸念する声が地元住民から相次いだのだ。このため奥区は臨時の区民総会を開き、新基地建設工事の奥港使用に反対する区民決議を全会一致で可決した。
 決議文では「辺野古新基地建設が県民の人権、民主主義に関わる問題であるように、奥港の使用は奥区民の民意に背くものだ」と訴えている。
 奥の使用許可の際、国頭村は同意条件を付している。(1)近隣に住宅や学校があるために安全管理計画を立てること(2)地区の代表者に計画を説明し、聞き取りを行い、必要な措置を取ること-などだ。
 すでに住民生活に悪影響が出ている。区民決議がその表れだ。県は許可取り消しを検討している。速やかに決断すべきだろう。本部港も岸壁使用許可の期限が11月30日に切れた。再申請が出ているが、新たに策定した「環境を悪化させる恐れがないこと」などと定めた審査基準に沿って慎重に判断すべきだ。
 港湾施設は本来、県民生活を豊かにするために使われるものだ。県民生活を脅かす新基地建設のために使われることは目的外使用も甚だしい。