<社説>オスプレイ墜落1年 危険の放置許されない


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 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸機MV22オスプレイが、名護市安部の沿岸に墜落した事故から13日で1年になった。

 普天間所属のオスプレイは今年8月、オーストラリア沖で墜落した。オスプレイ以外でもCH53大型輸送ヘリコプターが10月、東村の民間地に不時着し、炎上した。エンジントラブルによる緊急着陸なども相次いでいる。
 米軍の緊張感のなさは、いかんともし難い。米軍のやるがままを認める日本政府の責任も重大だ。少なくとも、民間地での米軍機事故の捜査の壁になっている日米地位協定は改定すべきである。
 県民が危険にさらされている状況を、これ以上放置することは許されない。県民生活を守るため、普天間飛行場の即時閉鎖を強く求める。
 米政府は9月、墜落地点を間違えた事故調査結果を発表した。墜落地点を「東村の南東2カイリ(約3・7キロ)」としたが、名護市が検証した結果、墜落地点から半径2カイリの同心円内に東村は含まれないことが分かった。
 調査結果は事故原因を「パイロットの操縦ミス」と結論付けた。墜落地点を間違えるずさんな調査であり、うのみにはできない。
 国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏は、オスプレイが回転翼を垂直にした固定翼モードでしか空中給油が受けられないことを挙げ「ヘリモードで補給ができないという事実は、予期されなかった欠陥」と指摘している。欠陥を隠すため、パイロットに責任を押し付けていることが強く疑われる。
 看過できないのは、米軍と日本政府がいまだに墜落を「不時着水」と言い換えていることである。
 墜落事故を重く受け止めず、矮小(わいしょう)化することに腐心する姿勢が新たな事故を誘発しているのである。その姿勢を改めなければ、有効な事故再発防止策は確立できない。
 オスプレイの10万飛行時間当たりのクラスA事故率は9月末現在で3・27で、普天間飛行場に配備された2012年9月末の1・65から約2倍に増えた。クラスAは、死亡事故や被害総額が200万ドル以上となる重大事故である。政府はオスプレイの事故率は他機種より「低い」として安全性を主張していたが、安全には程遠い。
 安倍晋三首相は11月の衆院本会議で「米軍の安定的な駐留のためには地元の理解を得ることが必要不可欠だ」「米軍機の飛行安全の確保は米軍が駐留する上での大前提だ」と述べた。
 地元の理解は得られてはいない。相次ぐ米軍機の事故は「安全の確保」ができていないことを証明する。米軍が駐留する大前提は崩れている。
 首相はこの事実に目を背けるのではなく、真摯(しんし)に受け止め、海兵隊を県内から撤退させるべきだ。