<社説>米軍「経路」逸脱否定 例外なき協定の締結を


この記事を書いた人 琉球新報社

 本国でこのような詭弁(きべん)が許されるのか。命の二重基準を許さないために新たな取り決めが必要だ。

 小学校の上空を米軍機が飛行することが、日米間で確認された経路を逸脱し合意違反に当たるとの指摘について、在沖米海兵隊は「海兵隊の運用は日米間の合意に沿って行っている」とし、合意違反との指摘を否定した。
 1996年に日米が合意した普天間飛行場の航空機騒音規制措置(騒音防止協定)は、米軍普天間飛行場を離着陸する飛行経路(場周経路)の設定について「学校、病院を含む人口稠密(ちゅうみつ)地域を避ける」としている。普天間飛行場周辺には小中高校や幼稚園、保育園、大学などの教育機関が16カ所隣接している。
 ただ協定には「できる限り」とのただし書きがある。米軍はこの例外規定を持ち出して、協定の合意違反を否定した可能性がある。
 しかし、2004年の米軍ヘリ沖縄国際大墜落事故を受け、07年に日米で飛行経路を再検討している。その際、普天間第二小学校の上空を避けることを確認しているはずだ。明らかな合意違反だ。
 今回の米軍ヘリ窓落下事故を受けて来県した福田達夫防衛政務官は、在沖米軍ナンバー2との会談で「そもそも場周経路から外れている」と指摘し、場周経路の順守を求めた。日本側も経路逸脱を問題視している。
 しかし、米軍に協定の運用を任せている限り、ただし書きを持ち出して、小学校上空を飛び続ける。ただし書きを認めた日本政府にも責任がある。例外なき新たな協定を締結するため、政府は米国と交渉する責務がある。
 騒音防止協定の抜け穴は飛行経路だけではない。夜間に及ぶ米軍機の騒音が、米空軍嘉手納基地や普天間周辺、本島北部の米軍ヘリ発着場周辺の住民を苦しめている。協定は午後10時から翌午前6時までの飛行と地上の活動は禁止と定めているが、これも「米国の運用上の所要のために必要と考えられるもの」は除かれる。この抜け穴によりオスプレイが深夜も飛行を続けても協定違反とされない。この点についても厳密に規定する必要がある。
 米軍が管理する普天間飛行場は、日米地位協定に基づく航空特例法により、安全規定を定める日本の航空法の適用を受けない。
 そもそも米国内の米軍飛行場で滑走路の延長上に設けられているクリアゾーン(土地利用禁止区域)が、普天間飛行場には設置されていない。本来なら緩衝地帯にしなければならないクリアゾーン内には住宅や学校、公共施設がひしめく。
 米本国では許されない基地の運用が沖縄でまかり通る。県民と米国民の命の重さが違うはずはない。子どもたちが安心して運動場を使えるようにするためには、普天間飛行場の即時閉鎖しかない。