<社説>かすむ「長寿沖縄」 県民ぐるみ対策必要だ


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 長寿県の名がかすみつつある。かつて男女ともに全国首位だった沖縄の平均寿命は、2015年の厚生労働省調査で女性が87・44歳の7位、男性は80・27歳の36位となった。前回の10年調査では女性3位、男性30位だった。

 沖縄の平均寿命そのものはわずかに伸びているが、全国平均の伸び率に比べて鈍化した分、順位を下げた形だ。
 危機的なのは20代から60代の年代別死亡率で県内男性は全国平均を上回ることだ。現状で推移すれば、長寿県どころか短命県になりかねない。今からでも遅くはない。県民ぐるみで対策に本腰を入れねばならない。
 今回の調査では全都道府県で平均寿命が伸びている。前回調査と比較すると、男性は1・18歳、女性は0・66歳伸びている。しかし沖縄では男性は0・87歳(都道府県別41位)、女性は0・42歳(同42位)にとどまった。
 原因として全国一の死亡率となっている男女の肝疾患、女性の糖尿病などがあり、専門家らは背景に過度のアルコール摂取や肥満率の高さを挙げている。
 県がまとめた「健康おきなわ21」行動計画中間報告書(2013年)によると、136の指標のうち目標を達成できたのは32項目、23・5%しかない。「悪化傾向にある」「悪化した」はいずれも17項目、12・5%で合わせると25%は改善どころか悪くなっている。
 「悪化傾向」「悪化した」項目を見ると、成人の肥満や1日当たりの食事に占める平均脂肪エネルギー比率、運動習慣がある成人女性の割合、未成年者の飲酒・喫煙率、糖尿病を原因とする新規透析患者の割合などが挙がる。
 目標が達成できた項目は児童生徒の肥満減少、男女の多量飲酒者の減少、40~74歳の男女での糖尿病予備群の減少などがある。
 調査結果から、県民の健康への意識は少しずつ向上しているが、食や運動といった生活習慣の改善には至っていないことが見て取れる。高脂肪の食事と運動不足が糖尿病などに結び付いたといえる。
 県民一人一人の意識改革が重要であることは当然だ。そのためには、なぜ健康を維持しなければならないかを改めて共に考えたい。
 経済活動や地域振興、子どもたちの成長、いずれも基盤には県民の健康な生活が必要だ。沖縄の発展を支えるものだといってもいい。ランキングの上下でなく、誰もが健康であることが沖縄の活力につながるという意味で平均寿命の在り方を捉え直したい。
 県が16年に策定した長寿復活に向けた行程表に基づき、官民一体となった取り組みが進められている。一朝一夕に人の習慣は変えられないが、食事を見直す、ウオーキングをするなど、今すぐできることは誰にでもある。長寿復活の鍵は県民の意識改革にあることを自覚しよう。