<社説>自民の改憲論点整理 屋上屋を架す必要はない

 自民党憲法改正推進本部は改憲を目指す4項目に関する論点整理を了承した。推進本部が公表した論点取りまとめによると(1)安全保障に関わる「自衛隊」(2)統治機構の在り方に関する「緊急事態」(3)1票の格差と地域の民意反映が問われる「合区解消・地方公共団体」(4)国家百年の計である教育充実-が「国民に問うにふさわしいテーマ」として掲げられている。

 一読して「屋上屋を架す」という言葉が浮かぶ。いずれも現在の憲法や既存の法律などで対応可能なものばかりだ。
 顕著なのが9条に対する自民党の考え方だ。推進本部が示す方向性では、自衛隊について、安倍晋三首相が突如提案した「1、2項を維持した上で自衛隊を憲法に明記する」に加え「9条2項を削除し、目的・性格をより明確化する」の両論併記となった。
 党内でも意見集約できない状態で、どのようにして国民に問うつもりなのか。
 歴代政権は自国への攻撃に反撃する個別的自衛権は9条でも認められるとして、自衛隊に必要最小限の活動範囲、装備を認めてきた。国民もその解釈にはおおむね理解を示してきた。現憲法でも国民は自衛隊の位置付けに関し、意見が二分する状態にはない。むしろ平和憲法を維持することを重要と考える傾向が世論調査などから分かる。
 第4次安倍内閣発足に伴う共同通信世論調査(11月)で9条への自衛隊明記に52・6%が反対し、安倍首相の下での改憲に50・2%が反対した。国民との乖離(かいり)を自民党は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 緊急事態に関しても、日弁連が2015年に東北3県で行った自治体アンケート(24市町村回答)で災害対策に「憲法が障害になった」と答えたのは1自治体しかない。多数は地方の権限強化を望んでいる。災害対策基本法などの法改正により、地方に権限を委譲し、国と地方の役割を明確にすることが重要だ。
 ましてや自民党が提示する「政府への権限集中」「私権の制限」は論外である。1946年の衆議院帝国憲法改正委員会で当時の金森徳次郎国務大臣は「非常という言葉を口実に政府の自由判断を大幅に残すと精緻な憲法も破壊される」と述べ、「非常大権」などを設けない理由を説明した。「緊急事態条項」の危険性は70年も前に指摘されていたのだ。
 合区解消、教育充実に至っては立法府の怠慢を憲法に責任転嫁するものでしかない。
 議員定数を見直さず、1票の格差を放置している国会にこそ責任がある。高額な教育費を軽減できるよう予算措置をし、支援の立法に取り組むことこそが立法府の本来の役割だろう。
 改めて自民党に問う。憲法を変える必要性はどこにあるのか。安倍首相が目指す「2020年の改憲」という日程ありきの議論なら、国民に問う必然性は全くない。