<社説>生活保護費見直し 最低基準の検討も必要だ

 厚生労働省は来年度からの生活保護費の見直しで、受給世帯の3分の2に当たる67%が減額になると発表した。食費や光熱費に充てる「生活扶助費」が減額されるためだ。

 見直しの基準は低所得層の消費動向などと比較して決められた。しかし、もともと生活の厳しい世帯と比較して決めた基準である。生活保護が必要な人のうち約2割しか受給していないという指摘もあり、実態を反映していない恐れがある。
 それに沿った見直しが受給者の生活を支えられるのか、疑問が残る。各地域で最低限度の生活ができる基準を決めて給付額を定めるのが自然な考え方ではないか。
 生活保護費には生活扶助と、医療費を全額公費で負担する「医療扶助」などがある。生活扶助は5年に1度基準が見直される。その比較対象となるのは低所得層の消費支出額だ。保護基準の方が高くなる場合が多く、引き下げに傾く。前回の基準見直しでは生活扶助は平均6・5%減額された。
 今回の見直しでは、65歳以上の単身世帯で76%、子どものいる世帯では46%が減額される。都市部の単身高齢者や母子世帯などへのしわ寄せが大きくなる。一方、町村に住むひとり親世帯などでは増額となるケースもあるが、全体としてみれば減額傾向だ。
 生活保護費は国と自治体が全額公費でまかない、国費分だけで約3兆円(2018年度予算概算要求)に上る。このため、支給基準の抑制圧力は年々強まっている。
 厚労省は先に、生活保護費の段階的引き下げで、3年かけて国費計約160億円を削減すると発表した。生活扶助は180億円減、ひとり親世帯を対象にした「母子加算」が20億円減だ。児童手当に相当する「児童養育加算」は40億円増額するとしているが、全体としては減額ありきにも受け取れる。
 生活保護の受給世帯は今年9月時点で約164万世帯を超え、20年間で約2・7倍となった。このうち独居の65歳以上の高齢者が48%と半数を占める。今後も無年金、低年金などで受給者は増えるだろう。
 増え続ける生活保護費を抑えるのは簡単ではない。しかし、今の支給額でも生活は苦しいとの声がある中で、単純に総額抑制を選んでいいのか。仕組みの見直しも必要ではないか。
 保護基準の見直しを検討した厚労省の審議会では、前回の見直し時から最低限度基準の必要性を指摘し、導入する手法を検討することを求めた。しかし厚労省に検討する姿勢は見えない。
 安倍政権は、貧困の連鎖を断つとして授業料の減免や給付型奨学金の拡充を打ち出したばかりだ。最低賃金引き上げなど暮らしの底上げも掲げてきた。それならば、生活に必要な最低限度の基準を定めることを検討すべきだ。