<社説>緑ヶ丘保育園の訴え 安全の切り捨て許さない


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 「子ども達の命は、つねに危険にさらされています」。戦後72年たっても、このような声を上げざるを得ない地域が国内で他にあるだろうか。

 米軍普天間飛行場に所属するヘリコプターの部品が屋根に落下した宜野湾市の緑ヶ丘保育園の父母会が、保育園上空の飛行禁止などの実現を求めて全国から集めた署名2万6372筆を翁長雄志知事に手渡し、要望実現への協力を求めた。
 在沖米海兵隊が「飛行中に落下した可能性は低い」と否定的な見解を示したことで、「自作自演」などの誹謗(ひぼう)中傷の電話が保育園にかかったり、メールが送りつけられたりしていた。そのような中、21日までの11日間で県内1万1千余、県外1万5千余の署名が集まった意義は大きい。
 翁長知事は「全力を挙げて取り組む」と約束した。日米両政府が子どもの安全より米軍の運用を優先する状況を変えるまで、抗議と要請を粘り強く繰り返してほしい。
 日米両政府は普天間第二小への米軍大型輸送ヘリコプターCH53Eの窓落下事故を受けて、宜野湾市内の幼小中高大学(28校)の上空を「最大限可能な限り飛行しない」として飛行を再開した。
 米軍機が学校上空を飛んでも「努力したが、できなかった」と言えばすむとの考えが「最大限可能な限り」との言葉の根底に見える。抜け道だらけの航空機騒音規制措置(騒音防止協定)を踏襲したにすぎない。これを再発防止策の一つとは断じて認められない。県民を愚弄(ぐろう)するのもいい加減にすべきだ。
 さらに問題なのは、保育園が「最大限可能な限り」飛行を避ける対象にすら入っていないことである。
 宜野湾市内の保育園は認可、無認可合わせて78施設ある。園児らが危険な状況にあるのは学校施設と何ら変わりない。保育園上空も避けるのが当然である。
 保育園を含めれば、市内のほぼ全域で米軍機は飛行できなくなるはずだ。日米両政府はそのような事態を避けるため、「可能な限り」飛行を避ける対象から保育園を外した可能性さえ疑われる。園児の安全を切り捨てることは断じて許さない。
 在沖米軍は普天間飛行場の滑走路補修工事のため、運用を中断していた固定翼機の飛行を再開すると発表した。県民要求とは裏腹に飛行場周辺の危険性がさらに増すことは確実だ。容認できない。
 米軍機事故が起きるたびに政府は米軍に遺憾の意を伝え、米軍から再発防止策を取ったと伝達されれば、即座に飛行再開を認め、その結果、事故が繰り返されている。この悪循環を断ち切らない限り、子どもたちと県民の安全は守れない。
 政府は県民の安全を守るため、事故発生装置と化した普天間飛行場を直ちに閉鎖すべきだ。実効性のある再発防止策はそれ以外にはない。