<社説>’17回顧 基地被害 政府は住民保護を放棄


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 2017年の沖縄は基地被害で明け、基地被害で暮れたと多くの県民は思っているはずだ。それほど訓練、飛行の強行、事件、事故が繰り返し起きた1年だった。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は4月、政府が護岸工事に着手した。12月にはN5護岸が長さ273メートルに達し、ほぼ完成した。新たにK4護岸建設の砕石投下も始まった。
 現場の環境破壊が著しい。7月に絶滅の恐れのある希少サンゴ14群体が見つかったが、沖縄防衛局の県への報告では13群体が死滅した。
 琉球新報社が9月に実施した世論調査では80・2%が県内移設に反対だった。「辺野古ノー」の圧倒的多数の民意を踏みにじり、環境を破壊しながら建設を強行することなど許されるはずがない。
 訓練強行も目に余るものがあった。嘉手納基地と津堅島訓練場水域では、米軍のパラシュート降下訓練が地元の反対を押し切って繰り返された。この訓練は以前、読谷補助飛行場で実施されていた。1996年の日米特別行動委員会(SACO)で、伊江島に移転することで合意したはずだ。しかし米軍は勝手に訓練場所を拡大している。やりたい放題ではないか。
 昨年12月に名護市安部沿岸に墜落した普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、今年も事故や緊急着陸などを繰り返した。8月には普天間所属機がオーストラリア沖で墜落し乗員3人が死亡した。緊急着陸は6月に伊江島補助飛行場と奄美空港、8月に大分空港と相次いだ。欠陥機としか言いようがない。しかしオスプレイはすぐに飛行を再開し、現在も沖縄上空を飛び続けている。
 危険なのはオスプレイだけではない。普天間所属のCH53E大型ヘリの事故も相次いだ。10月、東村高江の牧草地に不時着し、炎上大破した。米軍は一方的に事故機を解体し、周辺の土壌と共に現場から持ち去った。航空危険行為等処罰違反容疑の捜査対象の当事者が公衆の面前で堂々と証拠隠滅を図った。これで法治国家といえるのか。
 CH53は12月に入って、上空から次々と部品を落下させた。宜野湾市の緑ヶ丘保育園の屋根にプラスチック製の筒が落ち、普天間第二小学校の運動場に窓を落下させた。いずれも近くに園児と児童がいた。大切な子どもたちの命が重大な危険にさらされた。
 ところが政府は事故を引き合いに、辺野古移設の加速化を繰り返し主張している。萩生田光一幹事長代行は「だからこそ早く移設しなければいけないという問題も一つあると思う」と明言した。
 言語道断だ。危険除去を主張するなら、普天間飛行場の即時閉鎖しかない。辺野古移設を正当化するため、住民を危険にさらした事故を利用するのはもってのほかだ。住民保護を放棄した政府に「国難突破」を言う資格などない。