<社説>沖縄経済展望 成長モデルを確立しよう


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 成長を続ける沖縄経済は、2018年も安定して推移すると予想される。右肩上がりを続ける入域観光客に象徴されるように、昇竜の勢いは持続している。

 観光に限らず交易、ものづくりといった総合的な施策を行政には打ち出してほしい。地方活性化の「沖縄モデル」を確立する年としたい。
 日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)は、直近の昨年12月時点で全国の業況判断指数(DI、全産業)がプラス16だったが、沖縄はプラス38と異次元の好況感にある。
 全国のDIは直近でこそ10ポイント台に乗ったが、15~16年半ばまで一桁台だった。その間の沖縄経済は40ポイントを挟んで推移している。
 今年も沖縄経済をけん引するのは観光産業だろう。17年は初の900万人突破が確実視されており、通年でハワイを抜く可能性もある。世界的観光地を追い抜くまでに成長したのは、国内外の好景気という追い風もあるが、観光地としての魅力が広く認知された結果でもある。
 1日付本紙に掲載された専門家4氏の県内景気予想では観光が通年で93点となっている。各氏とも好調が持続するという見方で一致している。
 観光客1千万人時代が視野に入った今、新たな誘客策が必要だ。その筆頭に大型MICE施設建設がある。だが一括交付金の交付決定を巡り、採算性などで国と県の認識に溝があり、開業時期が先送りされた。波及効果の大きいMICE施設は沖縄の将来に不可欠である。沖縄の成長を後押しするためにも一刻も早い解決が望まれる。
 好調さが目立つ沖縄経済でも課題はある。中でも雇用問題は重要だ。専門家4氏の景気予想も総合で87点と前年より1点下がったのは雇用が79点と低かったからだ。
 観光にけん引されホテル建設などで活況が続く建設や、観光客に対応するためのサービス業などで人手不足が顕著になっている。
 有効求人倍率の改善など表面的には好転しているようだが、内実は正社員の求人の少なさに見られるように求職者とのミスマッチは大きい。雇用の質の改善は急務だ。
 好景気のもたらす利益が県民に還元されなければならない。そのためには人材育成、待遇の改善など働く環境を整える企業側の責任もますます重要となる。
 一方でJAの海外輸出強化や県と福建省の経済連携協定に基づく輸出実験に見られるように、アジア市場へ展開する機運も高まっている。うるま市の国際物流拠点産業集積地域にはものづくり企業も次々と進出し、沖縄発の工業製品輸出を目指している。
 沖縄にもやってくる人口減時代に備え、県内・国内市場だけでなく海外市場に沖縄産品を売り込むかは、成長戦略として大きな位置を占めるだろう。観光だけでない産業育成にも力を入れる時期だ。