<社説>新成人の皆さんへ 感性と行動力が未来開く


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 きょう8日は「成人の日」。大人への一歩を踏み出した皆さん、おめでとう。

 自らの人生を主体的に切り開いていってほしい。同時に、社会の一員として、柔軟な感性と旺盛な行動力で豊かな郷土づくりに積極的に関わっていくことを望みたい。
 今年の県内の新成人は1万6482人(男性8493人、女性7989人)で、前年より698人少ない。
 7日は県内21市町村で成人式が行われた。離島では帰省に合わせて正月に成人式を終えた地域も多い。
 石垣市白保では毎年、新成人が一人ずつ前に出て両親や地域に感謝の思いを語る。時に涙で言葉を詰まらせる姿は参加者の胸を打つ。他の市町村でも、式の前に新成人が地域の清掃に取り組む姿が見られるようになった。
 新成人が生まれた1997年4月2日~98年4月1日は沖縄の歴史に特筆される出来事があった。名護市辺野古沖への海上基地建設の是非を問う市民投票で反対が過半数を占めたものの、当時の市長が基地建設を受け入れて辞任した。今に至る辺野古新基地を巡る混乱の原点と言える。
 新成人からすると、生まれた時からある米軍基地は日常の風景になっているかもしれないが、戦後の沖縄の歴史をしっかりと学んでほしい。
 国際法を無視して住民の土地を強制的に奪い、70年余も占有し続けているのは、民主主義国家ではあり得ない。歴史をひもとけば、米統治の圧政による理不尽な事態が繰り返される中、先人たちが立ち上がり、人権と自治を少しずつ獲得していった苦難の道のりが分かるはずだ。
 新成人は2年前に導入された18歳選挙権が初めて適用された世代だ。だが、過去2回の国政選挙の10代投票率は40%台と低調だった。
 森川友義早稲田大教授(政治学)は「選挙に行かないことで、20代が政府に払うお金と受け取るお金は、70代と比べて生涯で4千万円損している」と指摘する。政治家は投票率の低い若者よりも高い年配者に向けた政策に予算を回すとの分析だ。
 「自分一人が投票しても世の中は変わらない」と諦めるのではなく、積極的に政治参加することで未来は変えられると信じよう。
 沖縄は今年選挙イヤーで、6市長選、11町村長選、30市町村議選、県知事選がある。地域の問題を自分ごととして考え、1票を行使してほしい。
 沖縄の非正規雇用率が45%に上る中、就職を控えた新成人には不安も付きまとうだろう。働く環境を整える責任は、政治、行政を含め先に大人になった私たちの側にある。好調な沖縄経済の恩恵が若い人たちにまで行き届くようにしないといけない。
 未来を希望に満ちたものにするには若い世代の力が必要だ。既成概念に新たな価値観をぶつけてほしい。一緒に沖縄の夢を描いていこう。