<社説>県立高校の地毛証明 多様性認める環境を

 なぜこれほどまで黒い直毛にこだわるのか。管理強化ではなく、多様性に配慮し自由な教育環境を整えてほしい。

 もともと髪の色が薄かったりくせがあったりする生徒が、生まれつきのものであることを証明するための「地毛証明書」を、県立高校全60校のうち52校(86・7%)が生徒に提出させていることが本紙の調べで分かった。
 証明書を求める理由として学校側は「染髪やパーマだと誤解して、地毛の生徒に不要な生徒指導をすることを避けるため」と説明している。生まれつきを証明するため、保護者の面談や署名、幼少時の写真提出を求めている。
 しかし、地毛など身体的特徴はプライバシーにかかわる。日本も批准している国連の「子どもの権利条約」第16条は、子どものプライバシー・通信・名誉の保護を定めている。証明書の提出を求めるのは、子どもの権利条約に反する可能性がある。
 証明書を提出した生徒から「染髪やパーマを疑われ、自分を否定されて嫌だった」との声が挙がる。髪の色は個人によって違うものだ。
 昨年、大阪の府立高校で生まれつき茶色っぽい髪を黒く染めるよう教諭らにしつこく強要され、不登校になったとして、女子生徒が府に損害賠償を求める裁判を起こした。生徒は指導に従ったが、髪を理由に授業や文化祭、修学旅行の参加を禁じられた。生徒指導を逸脱した著しい人権侵害だ。
 そもそも国際化が進む中で「髪は黒」という考えは、時代錯誤といえる。教室には外国にルーツを持つ生徒もいるだろう。
 地毛を確認する背景に、染髪を禁止する校則がある。染髪禁止の理由は「社会が求める高校生像に反している」「学習活動に集中するため」「ルールだから」という回答が多かった。
 違反した場合、猶予期間を決め黒く染め直してくるよう指導する。染めた色を戻さなかった場合「帰宅指導」として教室に入れない、式典に参加させないなど学校活動への参加を制限すると答えた学校が18校(30・0%)あった。17校(28・3%)は髪を染めて卒業式に来た生徒はその場で黒いスプレーで染め直させていた。
 裁量権は学校側にあるにしても、そこまで規制する権限があるのか疑問だ。どんな校則が必要なのかは本来、学校側が生徒や保護者の声に耳を傾けながら決めるものだろう。時代の変化に応じて見直してもいいはずだ。「ルールだから」という理由で思考停止してはいけない。
 学校は画一的ではなく、それぞれの個性を互いに尊重し、自分らしさを持った人材を育てる場である。個性よりも統制が重視される場ではない。何よりも「子どもの最善の利益が第一に考慮される」(子どもの権利条約第3条)場でなければならない。