<社説>子どものSNS被害 官民連携し犯罪防止を


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 コミュニティーサイトをきっかけとして性犯罪に巻き込まれる子どもが増えている。被害を防ぐために官民連携した取り組みが急務だ。

 県警が昨年末にまとめた暫定値で、2017年1月~11月末にかけて、会員制交流サイト(SNS)などによって、買春などの犯罪被害に遭った18歳未満の生徒数が前年同期比23人増(2・15倍)の43人に上り、年間の過去最高値を更新している。
 特に中学生の被害数は前年同期比14人増(2・75倍)の22人で、大幅に増加している。憂慮する事態だ。
 SNSなどに起因する児童買春・児童ポルノ法違反や県青少年保護育成条例違反などの摘発件数も前年同期比47件増(2・3倍)の83件となった。最多だった15年の52件を31件上回った。子どもを守るべき教育関係者の摘発も相次いでいる。
 しかし、事件が表面化するのはわずかだ。性暴力被害者の支援者らは「摘発や統計などはあくまで明らかになった数字」「性被害は被害者にも非があると思われ、声を上げにくい実態がある」と指摘している。
 性被害を防ぐには、どのような取り組みが必要か。
 まずは子どもに対する性犯罪の根絶に向けて、厳しく取り締まる必要がある。そのための態勢を強化してほしい。
 SNSなどの運営に携わる業者には、18歳未満が大人と交流できないよう規制する「ゾーニング」の導入など、実効性のある対策に努めてほしい。
 情報教育も必要だ。警察庁によると、学校でインターネットの利用方法について学んだかどうかの問いに、被害者全体の半数が「覚えていない」と回答している。危険性や犯罪への認識不足が被害を増やしている。
 内閣府の調査で、10歳未満の子どものネット利用率は39・2%。出会い系サイトなどに接続してしまった例もある。小学生のうちから学校でSNSの危険性を教える機会を増やす必要がある。
 学習指導要領は、情報モラル教育に力を入れるよう明記している。ネットの危険性を認識させる教育に力を入れてもらいたい。
 24時間やりとりが可能なSNSは、会って話すより親密な関係になることもあるという。子どもがスマートフォンを手放さずのめり込んでいる場合、注意しやめさせるのは保護者の役割だ。
 保護者に対し、悪質サイトへの接続を制限するフィルタリング設定の必要性を訴えるなど啓発活動も欠かせない。
 サイバー防止ボランティアの活動にも注目したい。学生らのボランティアが子ども向けサイバー教室やネット上のパトロールを行っている。違法なサイトや書き込みを発見し、警察による摘発につながった例も多いという。県内にもこうした活動が増えると被害減につながるだろう。