<社説>在園児の再選考 受け皿整備の加速必要だ


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 認可保育所の入所選考で、在園している園児が保育要件の変更の有無に関係なく、新規申込者と同列で再選考され、退所を余儀なくされる事例が県内で起きている。2017年度に継続入所できなかった在園児は県内3市町で31人に上った。新規申込者より入所の優先順位が低くなったためだ。

 認可保育所などの受け皿整備が追いつかないことが原因だ。その結果、毎年度選考にかけられる園児と保護者が負担と不安を強いられている。琉球新報が17年10月1日時点の速報値で待機児童がいた28市町村に聞き取りを実施したところ、在園児と新規申込者を同列に選考しているのは17年度で10市町村あった。このうち継続入所できなかった在園児が出たのが豊見城市、嘉手納町、八重瀬町の3市町だった。
 こうした在園児の再選考は全国的にも実施されているのだろうか。全国保育団体連絡会保育研究所は「保育の必要性の事由に変更がないにもかかわらず優先度の低い高いによって在園児を退園させるケースは聞いたことがない」という。
 内閣府の子ども・子育て本部の担当者も「在園児は当然保育の必要性が高い子と想定され、追い出される形になるのは一般的な感覚からするとどうかとは思う」として、疑問視する。全国的にみても沖縄の再選考は特異のようだ。
 児童福祉法の第24条1項には、市町村に対して「保護者から申し込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。ただし、付近に保育所がない等やむを得ない事由があるときは、その他の適切な保護をしなければならない」と定めている。
 保育所の定員を前提にすれば、自治体は保育の必要性の高い幼児の入所を優先させる順位付けをしなければならないのだろう。そのことで在園児が施設からはじかれてしまう。
 しかし児童福祉法の趣旨からすれば、在園児も新規申込者も双方を入所させる必要がある。それをできなくしているのが認可保育所などの不足である。施設整備を早急に進める必要がある。
 県がまとめた17年10月1日時点の速報値では待機児童は3952人に上る。昨年同時期より149人減少しているが、さらなる改善が必要だ。
 16年4月から17年4月までの1年間で県内の認可保育施設は108カ所、定員は約6800人増えている。0~2歳児向けの小規模保育所の整備も進めている。決して市町村による保育環境整備の取り組みが停滞しているわけではない。入園を希望する新たな需要が生じており、追いつかないのが実情だ。
 県は17年度末で待機児童解消を見込んでいたが、実現は厳しい。保育需要を正確に把握し、受け皿整備を加速させる必要がある。