<社説>引きこもり 当事者目線で支援しよう


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 仕事や学校に行けず、家族以外とはほとんど交流がない「引きこもり」。その長期化や高年齢化が社会的課題となっている。

 一番苦しくつらいのは本人と家族だろう。これは家庭内の問題ではなく、社会が解決に乗り出すべき問題だ。それには、当事者に寄り添った対策が欠かせない。
 県が2016年10月に開設した「ひきこもり専門支援センター」への相談件数が、1年間で延べ1228件に上った。相談対象の当事者は222人で、7割が男性だった。年代別では10~50代と幅広く、30代と40代が多かった。
 内閣府が16年9月に公表した推計によると、15~39歳の引きこもりの人は全国で約54万人に上った。期間は「7年以上」が約35%と最多で、引きこもりになった時期も「35~39歳」が1割を超えた。
 この調査には異論も出た。対象が40代未満だったため、実態を映していないと当事者団体や識者から指摘を受けた。国は次回から40代以上も調査する方針だ。
 当事者や家族でつくる「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」は独自に調査し、70万~100万人と推計している。
 自治体を対象にした家族会の調査では、62%が40代以上の相談を受けたとの結果だった。沖縄の支援センターの相談事例から見ても、引きこもりは若年者だけの問題ではないことは明白だ。
 引きこもりの要因は、いじめや不登校、仕事、人間関係、精神障がい、病気、家族の貧困など多岐にわたる。長期化すると、親も世間体を気にしたり、自分を責めたりして地域から孤立しがちになる。
 高年齢化するほど問題は深刻化、複合化していく。80代の親と50代の子を意味する「8050問題」という言葉も最近は登場している。
 当事者をいかに外に出すか、就労させるかだけに対策の主眼を置いてはならない。当事者の思いを尊重して、寄り添いながら、社会とつながる方法を見つけていくことが肝要だ。
 家族会の調べでは、当事者が望まない支援は「上から目線」や「無理やり外に連れ出そうとする」「問題を決めつける」ことだという。
 引きこもりは、他者との関係を断つことで、これ以上傷つかないようにする自己防衛の手段とも言える。心も体も疲れた際、時には引きこもる必要がある場合もある。
 引きこもりに即効策はないと言われる。性急に答えを求めずに、息の長い支援を社会全体で考えていきたい。
 その意味で、当事者や家族と直接関われる県支援センターの役割は大きい。個々の事情に応じた丁寧な支援に期待したい。併せて、県民への啓発活動に力を入れ、理解を広げることも望みたい。
 一方で行政任せでもいけない。県内にも支援団体がある。民間と行政が連携し取り組んでいくことを進めたい。