<社説>宮古陸自弾薬庫伝達 日中の緊張高めるだけだ


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 防衛省の福田達夫政務官は下地敏彦宮古島市長に対し、陸上自衛隊の弾薬庫の建設地として市城辺の保良鉱山を選定したと伝えた。地元の頭越しの選定であり、断じて容認できない。

 近く住民説明会を開くというが、これまでの経緯からして、反対する住民の声が無視されることを強く懸念する。
 旧千代田カントリークラブに建設が進む陸自駐屯地の近隣住民説明会は、本格的に工事が始まる前日に開催した。これから開く説明会も、建設ありきで進めることがあってはならない。
 福田政務官は下地市長から理解が得られたと判断したようである。だが市長の理解だけでは不十分だ。周辺住民をはじめ、多くの市民の理解を得ることが建設の最低条件である。近隣地域は既に反対しており、建設を強行することは厳に慎むべきだ。
 保良部落会は昨年12月、弾薬庫建設に対し「有事の際に攻撃目標となることは明らかで、近くで暮らす住民にとっては危険極まりない施設になる」との反対決議を賛成多数で可決している。
 弾薬庫には駐屯地に配備される車載型の地対空ミサイル発射機3基と地対艦ミサイル発射機4基の計7基分のミサイルが保管される。軍事拠点は攻撃対象になる。住民の不安は当然である。
 下地市長は福田政務官に「地域の理解と協力を受けられるように努力をしてほしい」と要望した。現状からして「地域の理解と協力」が得られる可能性は低い。下地市長は今後、地域の理解が進まなければ、容認から反対へとかじを切るべきである。
 看過できないのは、福田政務官の「周辺環境整備事業で希望があれば」との発言である。環境整備は陸自施設と関係なく、取り組むべきものである。建設容認と引き換えに国が予算を出すことは断じて容認できない。
 防衛省は宮古島市に700~800人規模の警備部隊と地対空・地対艦ミサイル部隊を配備する。駐屯地は2019年2月末までに完成させ、弾薬庫は19年度以降完成の予定である。保良鉱山には弾薬庫だけでなく、小銃の射撃訓練をする覆道射場なども建設される。
 宮古島の要塞(ようさい)化が進むことを危惧する。「観光の島」のイメージダウンにつながらないだろうか。
 防衛省が宮古島市に陸自を配備するのは海洋進出を強める中国を警戒し、島嶼(とうしょ)部の防衛力を強化するためだ。だが沖縄本島と宮古島間の公海を通る中国軍艦に、にらみを利かすことは両国の緊張を高める。陸自配備は市民を危険にさらすことになりかねない。
 中国当局の船の尖閣周辺への領海侵入は許されることではない。だが軍事で対抗するのは誤りだ。話し合いで解決を目指すことが日本のとるべき道である。先島への自衛隊配備はデメリットしかない。