<社説>米軍ヘリ第二小飛行 安全な校庭取り戻そう


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 わずか1カ月で日米合意違反である。米軍機に沖縄の空を飛ぶ資格はない。

 沖縄防衛局は18日、米軍普天間飛行場所属のUH1Yヘリコプター1機とAH1Zヘリ2機が宜野湾市の普天間第二小学校上空を飛行したのを確認した。この日、第二小は米軍機の上空接近を想定した避難訓練を実施していた。訓練直後に飛行するとは、あまりにも不誠実だ。
 昨年12月、第二小への米軍ヘリの窓落下を受けて、防衛省と在日米軍は市内の学校施設上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意した。防衛省はこれにより「米軍の行動は担保される」と強調していた。
 しかし、合意は「決して」飛ばないという意味ではない。「最大限」という表現で抜け道を残している。上空を飛行した場合の罰則もない。喜屋武悦子校長が「最大限の確認では納得できない」と述べるのは無理もない。運動場を使えない事態が1カ月以上続いている。
 そして、危惧していた通り、米軍ヘリは小学校上空を飛んだ。安全な校庭は遠のいた。米軍は合意を順守する意思はないのではないか。
 合意違反に小野寺五典防衛相は在日米軍副司令官に抗議し、第二小の上空を飛ばないように改めて「強く」申し入れた。しかし、合意違反を指摘することもなく、米軍の運用も規制できない。主権国家の体をなしていない。「当事者能力がない」という翁長雄志知事の指摘通りだ。
 一方、米海兵隊はレーダー航跡や操縦士の証言を基に上空飛行を否定している。防衛省が公開した映像を見ると、ヘリが上空を飛行しているのがはっきり分かる。米軍は否定する客観的な証拠を提示すべきだ。
 安全なはずの学校で、上空から物が落下する事態を想定した訓練を余儀なくされている。「まるで戦時中のようだ」と市教育委員会関係者が憤るのはもっともだ。異常事態である。
 第二小への米軍ヘリ窓落下で、事故の翌日休んだ2年生の男児はこの1カ月の間、「頭が痛い」「気分が悪い」などと訴えて早退や欠席を繰り返している。妹が通う緑ヶ丘保育園にも米軍機部品落下があり、母親はストレスにさいなまれている。
 普天間所属の米軍機は飛行場周辺だけでなく県内全域を飛行する。2016年12月に名護市安部でMV22オスプレイが墜落し、17年10月に東村高江の民間地にCH53E大型輸送ヘリが不時着し、炎上した。今月6日にUH1Yヘリがうるま市伊計島の砂浜に、8日にはAH1Zヘリが読谷村のホテルの近くに連続して不時着した。
 県民の命は常に危険にさらされている。名護市辺野古に新基地を建設することで危険性が除去できるはずがない。普天間飛行場をただちに閉鎖し海兵隊は撤退すべきだ。