<社説>トランプ政権1年 分断は世界の不安定招く


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 トランプ米大統領が就任してから1年となった。米国第一主義を掲げ、国内外で多くの混乱を招き、対立と分断を引き起こしてきた。世界の平和と繁栄を築く意思を感じることができず、大統領としての資質に疑問を抱かざるを得ない。

 トランプ氏は北朝鮮との対決姿勢を強め、中国とロシアとの競争を国防上の最優先課題に掲げるなど、融和より敵対姿勢が目につく。ツイッターなどによる過激な発言で不必要に敵対者をつくるなど、大国の為政者とは思えない振る舞いを続けている。
 スイスのシンクタンク・世界経済フォーラム(WEF)の報告書は、専門家の93%が北朝鮮情勢の緊迫化やトランプ米政権の米国第一主義を背景に、大国間による政治的、経済的な対立リスクが増大していると指摘した。
 米CBSが18日に発表した世論調査では、トランプ氏の支持率が37%にとどまった。就任から約1年を迎える大統領として、比較可能なレーガン元大統領以来で最低の支持率となった。不支持率は58%に上る。
 外交をみると、環太平洋連携協定(TPP)やパリ協定からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉開始などこれまで積み上げてきた国際合意の軽視が目立つ。いったん決めた国際取り決めをほごにする姿勢は、米国の威信低下を招いた。
 特定のイスラム圏諸国からの入国制限措置や、最近のアフリカやカリブ海諸国に対する侮辱発言など、人種差別、白人至上主義的な態度は多くの非難を受けている。人種や民族の共存が理念のはずの米国で分断を深めていることは残念だ。
 日本は北朝鮮問題や対中政策、経済・貿易、安全保障など多くの分野で、トランプ氏の言動に大きく左右されてきた。それを象徴したのが昨年11月に来日した際のトランプ氏の発言だ。
 日米首脳共同記者会見で「安倍首相は大量の(米国製)軍事装備を購入するようになるだろう」と述べ、北朝鮮対策の一環と称して武器のまとめ買いを迫った。これに対して安倍首相は「米国からさらに購入していくことになる」と応じた。トランプ氏の言われるままだ。
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について、両首脳は辺野古移設が「唯一の解決策」との認識で一致している。工事の遅れについて「いっそうの遅滞が平和および安全を提供する能力に及ぼす悪影響に留意」するとして、着実な進展を求めている。沖縄側からすれば到底納得できない。
 今年の米国は中間選挙を控えている。トランプ氏のこうした政治スタイルはさらに拍車が掛かりそうだ。分断と混乱の継続は米国の力をそぎ、世界の不安定化を招くだけだ。日本も米国との付き合い方を考える必要がある。