<社説>南城市長に瑞慶覧氏 政治の枠組み問われた


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 8年ぶりに選挙戦となった南城市長選は、無所属新人の瑞慶覧長敏氏(59)=社民、共産、社大、自由、民進推薦=が、無所属で現職の古謝景春氏(62)=自民、公明、維新推薦=に65票の僅差で初当選した。

 今回の選挙は、知事選を頂点として選挙の当たり年と言われる2018年の政局を占う。一市長選挙としてではなく、「オール沖縄」対自公という政治の枠組みが問われ、注目された。
 14年の知事選以降、辺野古新基地建設反対などで一致する「オール沖縄」勢力は、衆院選や参院選など全県選挙で強さを発揮したが、市民生活が主な争点となる市長選は相手候補に及ばなかった。
 翁長県政の与党各党などが推薦した瑞慶覧氏の初当選は、「オール沖縄」勢力にとって初の市長選勝利だ。同勢力が新基地建設反対を掲げる現職を推薦する2月の名護市長選に弾みが付くだろう。
 一方、自民と公明はこれまでほぼ全ての県内市長選で連携し、推薦する現職が再選を果たしてきた。今回は自民党の岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長ら党幹部が応援に入るなど力を入れた。古謝氏は、県市長会会長や全国市長会副会長を務め、翁長雄志知事と距離を置く保守系市長でつくる「チーム沖縄」の中心的役割を担っていただけに、手痛い落選となった。
 南城市長選は、自公に加え維新も推薦した。同じ3党の態勢で支援する名護市長選に向けて、3党間の連携強化など、態勢の再構築が求められそうだ。
 瑞慶覧氏は、出馬表明が現職より2カ月遅れたが、12年続く現市政に対する不満を「チェンジ」すると訴えて支持を集めた。南城市の基金120億円を原資に、給食費や通学バス・なんじぃバス(市内運行バス)の無料化などを掲げている。市内の待機児童の早期解消も求められている。市民の福祉向上と、今後増大が予想される社会保障などの財政需要とのバランスなど瑞慶覧氏の市政運営の手腕が問われる。
 市議会構成は少数与党になる。得票数でも古謝氏はほぼ互角の支持を集めている。瑞慶覧氏は幅広い市民の声に耳を傾け、公約実現のために、リーダーシップを発揮してもらいたい。
 古謝氏は3期にわたり教育や産業、地域振興などで「一定の成果を得られた」と12年間の実績を強調してきた。しかし、多選批判や、公立保育所を全て民営化するなど、市民との合意形成を巡る強引な政治手法が批判され、支持を広げられなかった。
 接戦だったにもかかわらず、今回の投票率は前回より7・55ポイント低い66・92%だった。選挙は民主主義の根幹である。18歳選挙権が導入され有権者が増える中で、投票率が低下していることを危惧する。投票率を高める取り組みが必要だ。