<社説>年金18年度据え置き 高齢者支える施策充実を


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 厚生労働省は2018年度に支給する公的年金額を17年度と同じ水準に据え置くと発表した。物価は上昇しているが、年金額改定の指標の一つである過去3年間の賃金が平均でマイナスとなったためだ。年金だけで暮らす高齢者の家計は苦しくなりそうだ。

 据え置きは2年ぶりで、17年度は前年度比0・1%の減額だった。17年平均の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)はプラス0・5%と上昇している。
 4月から介護サービス事業所への報酬が0・54%引き上げられる。その影響で年金から天引きされる介護保険料の上昇も予想される。据え置きは年金を唯一の収入としている高齢者にとって、実質的には減額に等しい。
 国民年金と厚生年金の支給額は経済動向を踏まえて毎年改定される。現行制度では高齢者の暮らしに大きく影響する物価と、保険料を負担する現役世代の賃金の変動が指標になっている。
 物価や賃金が下がった場合は年金も減額し、上がった場合は増額するのが原則だ。今回は物価は上昇しているが、賃金がマイナスとなっているために据え置きとなった。
 4月以降の年金額は、国民年金で40年間保険料を納め続けた満額の人の場合、月6万4941円だ。会社員や公務員が加入する厚生年金は、標準的な夫婦世帯で月22万1277円の支給となる。
 21年度からは現役世代の負担能力を考慮して賃金を重視し、賃金が下がった場合は年金の減額を徹底する新ルールが導入される。新ルールが導入されれば、今回のような場合は据え置きではなく減額になる可能性が高そうだ。国民年金の受給者にとって、これ以上減額されれば生活はかなり苦しくなる。減額は避けるべきだ。
 一方で現役世代の年金保険料の負担が重くなり過ぎることへの対策も必要だ。日本の公的年金は現役世代が負担する保険料を高齢者に分配する「世代間の仕送り方式」を取っている。
 少子高齢化が進む一方で平均寿命は延びており、現役世代の負担抑制などで年金制度を持続させるための改革を政府は04年に実施した。
 厚生年金の保険料率の上限を設定して段階的引き上げを決め、昨年9月に18・3%で固定した。国民年金は昨年4月に引き上げを終了し、物価や賃金の変動で改定される。
 保険料率の抑制も大切だが、支給額の減額回避の施策も進めるべきだ。政府は高齢者施策の指針となる大綱の見直し案をまとめた。公的年金の受給開始時期について70歳を超えても選択できるようにし、高齢者の就労促進を打ち出している。就労を続けて受給開始を遅らせれば、毎月の受給額が増える仕組みだ。
 安易な減額に走ることなく、さまざまな施策を充実させ、高齢者の暮らしを支える必要がある。