<社説>平昌五輪開幕 緊張緩和の平和の祭典に


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 第23回冬季オリンピック平昌大会が開幕した。選手一人一人が持てる力を存分に発揮してほしい。

 開会式では韓国と北朝鮮が「統一旗」を掲げた「コリア」として、2006年トリノ冬季五輪以来、合同で入場行進した。アイスホッケー女子では五輪初の南北合同チームが実現した。
 五輪の目的は「スポーツを通じて平和な世界の実現に寄与する」ことにある。平昌五輪が朝鮮半島の緊張緩和につながる一歩になってほしい。
 アジアでは1972年札幌、98年長野に続く3度目の冬季大会で、88年に夏季大会を開催した韓国では初めての冬季大会となった。
 日本オリンピック委員会(JOC)は海外の冬季五輪で最多の選手を派遣した。複数の金を含むメダル9個以上を目標とし、国外の冬季五輪で最高だった前回ソチ大会の8個を上回る目標を掲げる。選手らの活躍を期待したい。
 主将を務めるスピードスケート女子の小平奈緒選手は金メダルの最有力候補に挙げられ、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手は2連覇に挑戦する。ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手は前回4位に終わった雪辱を期す。
 10代の選手に注目が集まる。フィギュアスケートで、女子の日本代表の宮原知子選手と坂本花織選手が共に初の五輪に臨む。スノーボードではハーフパイプの男子で、19歳の平野歩夢選手が優勝を狙う。
 一方、式典には金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏やペンス米副大統領のほか安倍晋三首相も出席した。
 北朝鮮は五輪直前の8日、朝鮮軍創建70年の記念日を迎え、首都平壌で軍事パレードを実施した。新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を4基登場させた。金氏は「侵略者らがわが祖国の尊厳と自主権を0・001ミリも侵害したり、もてあそんだりしないようにすべきだ」と演説した。米国との対決姿勢は変わっていない。
 米国も韓国と連携して最大限の圧力をかけ続けるとの方針を崩していない。延期した米韓合同軍事演習を、五輪・パラリンピック終了後の4月に再開する予定だ。両国の力と力による対決姿勢がエスカレートすれば、朝鮮半島情勢はますます不安定になる。
 韓国の文在寅大統領はドイツのシュタインマイヤー大統領に「南北関係改善と朝鮮半島の非核化はともに進めるしかない。われわれの課題は南北間に生まれた対話の空気をいかにして五輪後まで引っ張り、米朝対話に発展させるかにある」と語っている。
 10日の南北首脳級会談で、金氏は親書を通し文大統領の訪朝を要請した。軍事境界線近くで開催される「平和の祭典」を機に、米朝対話も実現してもらいたい。安倍首相には米朝対話に向け、外交努力を求めたい。