<社説>知事県政運営方針 「誇りある豊かさ」実現を


この記事を書いた人 琉球新報社

 翁長雄志知事が県議会2月定例会で、2018年度の県政運営方針を説明し「辺野古に新基地は造らせないということを引き続き県政運営の柱に、全力で取り組む」との決意を改めて表明した。

 新基地建設に反対する民意が圧倒的にもかかわらず、安倍政権はそれを一顧だにせず、建設を強行している。それだけでなく、民意の切り崩しを狙い、予算面で県に圧力をかけている。
 翁長知事の県政運営方針は安倍政権の圧力に屈しない決意の表れである。一歩も引かない姿勢を評価したい。
 安倍政権は内閣府の18年度沖縄関係予算を2年連続で減額し、前年度比140億円減の3010億円に決定した。13年に安倍晋三首相が21年度までの3千億円台確保を表明して以降、最少額である。沖縄振興一括交付金は4年連続で減額し、17年度当初比171億円減の約1188億円とした。
 「経済の基本インフラ」である大型MICE施設の整備は、内閣府が沖縄振興一括交付金の活用に難色を示し、計画が停滞している。
 これらは、翁長知事が新基地建設に反対していることに対する意趣返しであることは明らかだ。
 安倍首相は衆院予算委員会で、米軍普天間飛行場など在沖基地を県内に移設する理由を「移設先となる本土の理解が得られない」と述べた。
 沖縄に過重な負担を押し付ける理由として「本土の理解」を尊重することが正当であるかのようなゆがんだ認識である。県民からすれば、断じて認められない。
 それでも、この発言が全国的な問題にはなっているとは言い難い。そのような中にあっても、翁長知事は選挙公約でもある新基地建設阻止を実現する責任がある。
 だが、不退転の決意を述べるだけでは、国に押し切られてしまう懸念がある。新基地建設阻止に向けて、実効性のある具体的な対応を早急に打ち出すことを求めたい。
 一方で、新基地建設阻止は翁長知事一人でできるものではない。幅広い支援が不可欠だ。そのことを県民一人一人が認識したい。
 翁長知事は17年度県政運営方針で、1兆円超とした観光収入を今回は「1兆1千億円」、1千万人超とした入域観光客数を「1200万人」と21年度までの目標数値を具体的に掲げた。民間と連携し、着実な成果を上げてほしい。
 県政の課題は基地問題だけではない。翁長知事は求人と求職のミスマッチや子どもの貧困率の深刻な状況、貧困の世代間連鎖などの解決にも「全力で取り組む」姿勢を改めて打ち出した。
 新基地問題など、さまざまな課題解決に向けて翁長知事の手腕が問われる。着実に前進した先に、翁長知事が繰り返し述べる「『誇りある豊かさ』の実現」が見えてくる。