<社説>全学校上空飛行禁止 国は本気で米軍と交渉を


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 相次ぐ米軍機の事故やトラブルに業を煮やし、県教育委員会が異例の行動に踏み切った。県内の全小中高校や特別支援学校上空の飛行禁止を米軍に求めるよう、沖縄防衛局に対し要請した。

 事故続発に加え、その後の米軍の不誠実な対応についても教育者として看過できず、憤りや危機感の高まりが背景にある。当然の要求である。
 政府は従来の形式的な申し入れで済ませようとせず、有効な回答を得るまで米軍と本気の交渉を粘り強く重ねていくべきだ。
 県教委は例年、この時期に入学試験中や卒業式・入学式の飛行禁止を要請してきた。今回は平敷昭人教育長が「児童・生徒の命を守る観点から」として、全学校上空の飛行禁止にまで踏み込んだ。PTA関係者が驚くほどの強い覚悟と決意である。
 昨今の米軍を取り巻く事態が非常に深刻で、危険水域に近づいているからだ。
 発端は、昨年12月の普天間第二小学校への米軍ヘリ窓落下事故だ。子どもたちが安全に過ごせるはずの学校に、命を脅かす物体が空から落ちてくる環境は極めて異常だ。
 米軍機事故を想定した避難訓練を強いられる学校が日本のどこにあろうか。子どもたちが安心して学べる教育環境に、格差があってはいけない。
 窓落下事故を受けて、防衛省と在日米軍は昨年12月、宜野湾市内の学校上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意した。
 しかし1カ月後には米軍ヘリ3機が普天間第二小の上空を再び飛行した。防衛局が撮影した証拠の動画もあるが、米軍は否定し続けている。
 過ちを認め反省しようとしないのは米軍の体質なのか。
 第二小事故の2週間前に起きた保育園への部品落下事故もいまだに認めてはいない。保育施設も含めて、全ての子どもたちの安全を守らなければならない。
 今月8日のうるま市伊計島でのオスプレイ吸気口落下も、通報は1日後だった。
 14日に国頭村安田で確認されたオスプレイの空中給油訓練も、訓練空域外だった。最低限のルールさえ守れずに、米軍機は県内全域を縦横に飛び回っている。
 危険なのは普天間飛行場周辺だけではない。所属機は北部訓練場や伊江島など、各地で訓練を繰り返している。
 米軍が傍若無人ぶりを繰り返すのは、日本政府にも一因がある。県民の命を危険にさらす事件・事故があっても、正面から指摘できず、黙認、追従してばかりだからだ。
 沖縄防衛局や外務省沖縄事務所をはじめ、弱腰な日本政府の責任は重い。今回の県教委の要請も、従来のようにただ聞き置くのではなく、厳しく米軍を問いただし、改善を迫っていくべきだ。
 安全を確保する一番の近道は普天間飛行場の即時閉鎖と海兵隊の撤退だ。危険は元から断たないといけない。