<社説>高齢社会対策大綱 「老後の安心保障」基本に

 政府は高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。

 65歳以上を一律に高齢者とみることを見直し、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにする。高齢者の就労を促すことを狙い、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境の整備を打ち出した。
 高齢者を一律で65歳以上とみる考え方は、確かに現実的ではない。高齢でも自立生活が送れる「健康寿命」は男性71・19歳、女性74・21歳である。厚生労働省が2016年に実施した調査では「高齢者だと思う年齢」の質問に「70歳以上」との回答が41・1%で最も多かった。
 日本老年学会なども17年に「高齢者」の定義を現在の65歳から10歳引き上げて75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳を「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表している。
 一方、16年版厚生労働白書によると、60歳以上を対象にした調査で65歳を超えても働きたいと7割が希望しているものの、実際に働いている人は2割にとどまっている。
 厚労省の調査では、昨年1月から7月までに65歳を過ぎてから新たに雇用、または再雇用された高齢者約65万人のうち、70%がパートなどの非正規だった。正社員は女性19%、男性35%でしかない。
 現状は「年齢にかかわらず柔軟に働ける環境」には程遠い。その改善は急務である。
 高齢者の年齢を見直す大きな理由の一つに年金支給額の抑制があるのは確実だ。25年には全人口の3人に1人が65歳以上で占める。働き盛りの世代が高齢者を支えることを前提につくられた年金制度は、現行のままでは維持できなくなってきている。
 受給開始を70歳以上も選択できるようにしたのは「選択肢の幅を広げる」(加藤勝信厚労相)ためではない。幅を広げることで、早めに受給する人への支給額を減らし、全体として支給額を抑制するのが目的である。
 国は年金支給水準を抑制する政策を既に実施している。支給額をこれ以上、減額することは断じて認められない。
 安倍晋三首相は高齢社会対策会議で「高齢化はますます進行し、地方人口の減少も見込まれている。全ての世代が幅広く活躍できるような社会を実現することが重要だ」と述べた。
 安倍首相が言う「活躍」とは、働くことで日本経済に貢献することなのだろう。強い違和感を禁じ得ない。加齢や障がいが原因で働けない高齢者もいることを忘れてはいないか。それぞれの立場で、社会に貢献できることはあるはずである。
 高齢者の雇用確保も重要である。だが、高齢者施策の基本は「老後の安心」を保障することである。就労促進と併せ、支えが必要になったときに安心して暮らせる仕組みを充実させなければ、超高齢社会は乗り越えられない。