<社説>普天間停止要求決議 「沖縄に寄り添う」時だ


この記事を書いた人 琉球新報社

 県議会が3週間で2度も米軍普天間飛行場の即時運用停止などを求める意見書と抗議決議を可決した。いずれも全会一致での可決である。普天間飛行場の即時運用停止を県議会が求めたのは初めてである。無視することは断じて許されない。

 安倍晋三首相は「沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くす」としている。今こそ、その言葉を実行する時だ。
 普天間の5年以内運用停止は2013年末、仲井真弘多前知事が安倍首相に求めた基地負担軽減策の一つである。仲井真氏が辺野古移設に向けた埋め立て申請を承認する事実上の条件で、政府は実現を約束していた。
 政府は5年以内運用停止について、14年の知事選前に「日本全体で沖縄の負担を軽減させてもらう」(菅義偉官房長官)とした。だが翁長雄志知事の就任後、政府は「地元の協力を得られることが前提」との新たな条件を一方的に付け加えた。全国の協力を得る姿勢を放棄し「沖縄側の協力」のみを重視する姿勢に変節している。
 普天間飛行場の名護市辺野古への移設は「普天間の早期の危険除去」が目的ではなかったのか。その有効策の5年以内運用停止を棚上げするならば「早期の危険除去」は、米国に最新鋭の基地を提供するための方便であることを政府が認めたも同然だ。
 二つの意見書と抗議決議はそのほか、保育園・学校・病院・住宅など民間地上空の飛行・訓練中止、在沖米海兵隊の国外・県外への早期移転などを求めている。
 いずれも県民の安全を守るためには必要な措置である。県議会は1日に可決した普天間飛行場の即時運用停止などを求める意見書・抗議決議を在沖米軍、在沖米総領事館、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所を訪ねて手渡した。
 その際、ジョエル・エレンライク在沖米総領事は「学校や病院上空は飛行しないことは可能だ」と要請に応じる姿勢を示した。可能ならば、以前から実施してしかるべきである。できることさえ、放置し続けているのはいかがなものか。
 今回の二つの抗議決議などには「沖縄は米軍の植民地にあらず」「沖縄は植民地ではない」との文言が盛り込まれている。
 米軍は県民に恐怖や不安を与え続ける状況を改善せず、不時着や炎上事故、部品落下事故を繰り返している。県民の安全を軽視する米軍の訓練を日本政府も止めず、県民よりも米軍を優先する姿勢に徹している。沖縄の置かれた状況はまさに「植民地」のようである。
 県議会の全会一致の抗議決議などを重く受け止めない米軍、醜いばかりの対米追従姿勢に終始する政府への怒りが「沖縄は植民地ではない」との言葉にこもる。政府は深刻に受け止めるべきだ。