<社説>沖縄担当相に福井氏 真に「寄り添う」政治を


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 体調不良を訴えて辞任した江崎鉄磨沖縄北方担当相の後任に福井照氏(衆院比例四国ブロック選出)が就任した。

 就任会見で福井氏は「沖縄の皆さんの心に寄り添う」と述べた。衆院沖縄北方問題特別委員長の経験者でもある。名護市辺野古の新基地建設など、沖縄に対する強硬姿勢が目立つ安倍政権の中で、真に県民に「寄り添う」政治の実現を求めたい。
 昨年8月に沖縄北方担当相に就任した江崎氏は、健康問題に加え、失言や国会審議で誤った答弁を繰り返したことも、辞任を認めた政権の判断を後押ししたとみられる。
 沖縄担当相に就任した福井氏にも、過去の言動に幾つかの懸念がある。
 衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で理事を務めた2016年に、TPP承認案に関し「(特別委員長だった)西川公也議員の思いを、強行採決という形で実現するよう頑張らせてもらう」と述べた。与党のおごりと批判され、不適切な発言をしたとして理事を辞任した。
 自民党報道局長時代の14年には、萩生田光一筆頭副幹事長と連名で、在京テレビ各局に対し、総選挙報道の公平性確保などを求める文書を送っていた。
 選挙期間中の報道について出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者などの選定を公平中立にし、街頭インタビューや資料映像も一方的な意見に偏ることがないよう求めた。政権与党が報道番組の具体的な表現手法にまで立ち入って事細かに要請することは前代未聞だった。
 国から放送免許を与えられるテレビ局は、放送法で政治的な中立公正性が求められている。日本民間放送連盟の放送基準があり、各局がそれぞれ報道の公平性に責任を持っている中、政権与党からの「要請」は「圧力」と受け取られても仕方がない。
 福井氏が異論を許さない安倍1強政権の一翼を担い、沖縄と真剣に向き合わないのなら、良好な関係を築けない。
 歴史を振り返れば、1952年4月、サンフランシスコ講和条約3条によって沖縄は日本と切り離され、米国統治下に置かれた。その苦難の歴史に「償いの心」を持ち、国の責任で振興を進めるのが日本復帰に際する沖縄振興の精神だった。
 沖縄担当相の前身は沖縄開発庁長官である。初代長官となる山中貞則氏は71年、沖縄関係法案の趣旨説明で「日本国民および政府は、この多年にわたる忍耐と苦難の中で生き抜いてこられた沖縄県民の方々の心情に深く思いをいたし、県民への償いの心をもって事に当たるべきである」と強調している。
 福井氏は「いかに皆さんの人生を豊かにしていくか。沖縄の皆さんと考え、実行したい」と語った。沖縄振興の精神を忘れず、新基地建設断念をはじめ沖縄の自立的発展の実現に尽力してほしい。