<社説>嘉手納所属ヘリ亀裂 直ちに運用中止すべきだ


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 県民の安全がないがしろにされている。老朽化した危険な米軍ヘリコプターが県内を飛び回る状況は、断じて容認できない。

 米空軍嘉手納基地第33救難飛行隊のHH60G救難ヘリが老朽化し、機体の亀裂なども確認されていると、米軍事専門紙ディフェンス・ニュース(電子版)が報じた。
 嘉手納基地広報は老朽化ヘリについて「全ての機体は毎年、毎月、毎週、毎日の厳しいメンテナンスと安全確認をした上で飛行している。もし安全に飛べない場合は飛んでいない」とし、特に問題視していない。
 救難飛行隊のクリス・アレン指揮官は「過去数年間、機体構造の亀裂を見つけるようになった。発見した場合は保守点検し、基本的に本社(シコルスキー社)に送り、補強した上で戻る。だからこそ、戦闘任務に参加し続けることができる」としている。
 メンテナンスと安全確認をした上で飛ぶのは当然だ。だが、米軍機の事故が相次ぐ中、米軍の一方的な「安全宣言」をうのみにはできない。老朽化したヘリを飛ばさないことが最善の策である。
 米軍事専門紙が報じたのは、老朽化したヘリの飛行は重大事故につながりかねないと認識したからであろう。米軍は事態をもっと重大に受け止め、危険性を深く認識すべきである。
 救難飛行隊のHH60ヘリは9機あり、うち1機は常に整備している状態だという。最も古い機体は1980年代後半の製造である。全機体で7千時間の飛行寿命に近づき、既に超えた機体もある。
 飛行寿命を超えた機体は、安全な運用は保証されないはずである。日常的に整備しているからといって、飛行寿命を超えたヘリを飛ばしてはならない。
 救難飛行隊は戦地での救助活動などを担い、現在も半数がアフガニスタンでの任務に当たっている。中東での作戦では、設計上の許容量を超えた物資の過積載や許容範囲を超す高度、高温の中でヘリを運用しているという。それが老朽化した機体に過重な負荷を与え、亀裂が入ることにつながっているのではないか。
 HH60ヘリは2013年8月、宜野座村の米軍キャンプ・ハンセンに墜落、炎上し、乗員1人が死亡する事故を起こしている。隊員を危険にさらすことは、米軍も本意ではないだろう。直ちに運用を中止すべきだ。
 米空軍は新型のHH60Wを112機購入する経費を19会計年度予算案に計上している。だが、老朽化した機体を新型に替えても、問題が全て解決するものではない。
 新鋭機でも整備ミスや操縦ミスはあり得る。それに加えて、県内では米軍機が民間地上空を常時飛行している。沖縄は米軍が駐留し、訓練するには不適な場所であることの証しだ。基地の整理縮小を進めねば、危険は残り続ける。