<社説>「森友学園」問題 昭恵氏の喚問不可欠だ


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 トカゲのしっぽ切りで終わったと、国民に思わせるようなことがあってはならない。安倍昭恵首相夫人が関与していないならば、与党は証人喚問に積極的に応じるべきである。

 学校法人「森友学園」への国有地払い下げ問題が明るみに出て1年余が過ぎた。評価額から約8億2千万円も値引きし、約1億3400万円で国有地が売却されたことに政治の関与はあったのか。いまだに判然としない。
 森友学園に関する決裁文書の改ざんが明らかになったものの、疑念は深まるばかりである。
 決裁文書からは昭恵氏に関する記載が削除されていた。昭恵氏が2014年4月、小学校予定地の視察をした際「安倍昭恵総理夫人から『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」とする森友学園側の発言や、森友学園の籠池泰典前理事長夫妻が昭恵氏と一緒に撮った写真を提示されたという記載も消された。
 講演で「昭恵夫人が学園の教育方針に感涙した」とするインターネット記事内容を説明した部分も、決裁文書から消去した。
 削除したのは、昭恵氏を財務省が森友学園の有力な後ろ盾として意識していたことの裏返しにもみえる。森友学園は昭恵氏の視察などを財務省に説明した後、「特例」で10年間の定期借地契約を結んでいる。
 16年3月には、籠池前理事長が東京の財務省で建設予定地のトラブルに関して直談判した。その直後、昭恵氏から「どうなりましたか」と進展を尋ねる電話があったと、国の職員に語る音声データの存在が明らかになってもいる。
 「前に進めて」発言について、安倍晋三首相は「妻に確認し、そのような発言はしていない」と否定した。だが、夫婦の間の確認で済ませていい話ではない。昭恵氏が国会の場で事実関係を明らかにしなければ、国民は納得しないし、信用しない。
 安倍首相から昭恵氏を通じ「100万円の寄付を受けた」とする籠池前理事長の証言も両者の主張が食い違い、真偽のほどは分かっていない。昭恵氏が国会の場で説明すべきことはたくさんある。
 昨年2月、国会で「記録は廃棄している」と答弁した財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は、麻生太郎財務相から決裁文書改ざん問題の最終的な責任者と名指しされた。だが、佐川氏の証人喚問だけでは不十分である。
 籠池前理事長は昨年3月の証人喚問で、国有地売却について「神風が吹いた」「何らかの見えない力が働いた」と述べている。
 昭恵氏は、森友学園がこの土地で建設を計画していた小学校の名誉校長に一時就任していた。籠池前理事長夫妻と関係が深かった昭恵氏の証人喚問は、森友学園問題の真相解明に不可欠である。