<社説>欧州直行便計画 国際観光地の魅力創ろう


この記事を書いた人 琉球新報社

 県は2020年までに欧州からの沖縄直行便を就航させることを目指している。第2滑走路が完成する那覇空港を国際ハブ空港とし、欧州圏とアジア、日本の結節点とする計画だ。

 国内、東アジアに加え欧州からも観光客が訪れるようになれば沖縄は国際的観光リゾート地の地位が確立する。それには路線の確保とともに、欧州客の望む長期滞在できる国際観光地の魅力創りが欠かせない。
 県の発表した「国際旅客ハブ形成に向けた将来ビジョン」は全日空(ANA)、ルフトハンザ航空(ドイツ)と連携して那覇空港とアジア、日本、欧州を結ぶ新たな航路や周遊ルートを構築する。
 計画初年の18年はANAなどと連携して欧州圏への広報活動を充実させる。フランクフルトから東京を経由し、那覇と国内路線を用いた周遊ルートをつくる。19年は東京、香港、上海、ソウルと結ぶ那覇への便を活用し、外国人観光客を沖縄に呼び込む。最終年の20年は欧州直行便につなげる計画だ。
 観光入域客数が過去最高を更新し続けている沖縄だが、観光客1人当たりの消費額など、沖縄経済への波及効果にはまだ課題がある。
 昨年、沖縄は入域客数でハワイを抜いたが、観光客の平均滞在日数はハワイが8・9日なのに対し、沖縄は3・7日と、2・4倍の差がある。ハワイは保養や滞在を目的に訪れる欧米からの観光客が多いためだ。滞在日数の差は観光客1人当たり消費額にも直結し、ハワイが約21万円に対し、沖縄は約7万5千円と2・8倍の開きがある。
 17年に沖縄を訪れた外国人観光客数は254万2200人。その81%を占めるのは台湾、韓国、中国本土、香港の4カ国・地域だ。格安航空会社LCCの新規就航や拡充に加え、台湾と中国、香港はクルーズ船の寄港も増加して、空路・海路客ともに増えた。
 県の外国人観光客実態調査(17年3月)によると、宿泊日数は平均3・7日で、沖縄旅行で満足した活動の上位は「ダイビング」「自然・景観地観光」「海水浴・マリンレジャー」だった。海や自然を沖縄の魅力とし続けるためにも、その保護と景観に配慮した都市計画も必要だ。
 米コンサルタント会社が米英などの外国人に行ったアンケートでは、日本国内観光地の認知度は富士山に次いで沖縄は2位で、京都や鎌倉を上回った。沖縄の認知度は決して低くはない。
 今後は訪れたい場所、長く滞在したい場所に格上げしなければならない。ラグビーの19年ワールドカップ、20年の東京オリンピック・パラリンピックも好機になる。財産である海や自然だけでなく特有の文化や芸能を生かす必要がある。離島を含めた魅力的な観光プログラムをつくり、長期滞在する欧州客や富裕層を呼び込みたい。