<社説>中朝首脳会談 非核化実現につなげたい


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 国際社会への仲間入りを強く期待させる動きである。北朝鮮が対話に踏みだしたことを、まずは歓迎したい。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が中国を非公式訪問し、習近平国家主席と会談した。今回の中朝首脳会談を出発点に朝鮮半島の軍事的緊張緩和、非核化の実現へとつなげたい。
 注目したいのは、金氏が習氏との会談で「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」「南北関係を和解と協力の関係に転換させる」と表明したことである。
 2005年9月の6カ国協議共同声明で、北朝鮮は核の完全放棄を確約した。その見返りにエネルギー支援などを受けた後、核実験を再開して核・ミサイル開発を進め、国際社会を裏切った。
 北朝鮮は4~5月に南北首脳会談や米朝首脳会談を予定している。合意をほごにした過去の経緯はあるものの、金氏が強硬姿勢を軟化させたことで、対話へと本格的にかじを切る可能性はある。
 これを好機と捉え、国際社会は北朝鮮が後戻りしないように一致協力して対応する必要がある。
 金氏は「米韓両国が善意でわれわれの努力に応え、平和と安定の雰囲気をつくり、段階的で歩調を合わせた措置を講じれば、非核化の問題は解決できる」とも述べた。
 金氏が求める米韓両国の「善意」には、4月に予定する米韓合同軍事演習の中止がまず挙げられる。対話ムードに水を差す軍事演習はやめるべきだ。
 国連安全保障理事会の度重なる制裁決議採択によって、北朝鮮は経済的な苦境にある。「血盟」と呼ばれた中国との伝統的な関係を修復し、経済的後ろ盾を復活させることで、食糧支援や投資など大規模な経済協力を引き出す狙いも北朝鮮にはあるだろう。
 だが、北朝鮮が困難な状況から抜け出すには、中国との関係修復だけでは不十分である。これまでのように合意を軽んじる姿勢を根本から改めることを求めたい。それなしには、経済の立て直しや国際社会からの孤立から脱することはできない。金氏はそのことを十分認識し、対話の道を歩んでもらいたい。
 米韓両国が対話に軸足を移す中、圧力最大化を提唱してきた日本は現時点で、蚊帳の外に置かれている。安倍晋三首相は「核・ミサイルの完全、検証可能かつ不可逆的な放棄に向け、北朝鮮が具体的行動を取るまで最大限の圧力をかける」との姿勢を堅持している。
 日本も北朝鮮側に首脳会談の意欲を伝達しているが、実現は見通せない。安倍首相が北朝鮮を刺激することで、マイナスに働くことを危惧する。北朝鮮が「解決済み」とする拉致問題を打開し、拉致被害者の早期帰国を北朝鮮に実行させるため、安倍政権は首脳会談を早期に実現するように全力を挙げるべきだ。