<社説>小4いじめ自殺 子どもの信号見逃すな


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 豊見城市内の小学4年の男児が自殺した問題で、市教育委員会設置の第三者委員会は児童に対するいじめを認定し、自殺の大きな要因の一つにいじめがあったとする報告書を答申した。

 報告書では学校側が適切な対応を取っていれば、自殺を防げたと判断した。いじめに対する学校側の認識の甘さを指摘している。答申を踏まえ、今後は二度とこうした悲劇を引き起こさないよう、関係機関が再発防止に向けて連携を深める必要がある。
 いじめ防止対策推進法ではいじめを学校に在籍する児童に対してほかの児童が行う心理的、物理的な影響を与える行為で、対象児童が心身の苦痛を感じているものと定義している。
 報告書ではこの定義に該当するいじめが5件あったと認定している。「ズボンを下ろされる」「カーディガンを引っ張られる」などだ。
 担任は児童が泣いて訴えるなどしていたことから、こうした事案を把握していた。ところが第三者委員会の聞き取りに「いじめがあったというより、トラブルに近いのかなと思っている」と述べており、いじめと認識せず、学校全体で共有していなかった。
 自殺する約5カ月前に実施された心理検査では、児童は「要支援群」に分類された。「要支援群」はいじめ被害を受けている可能性がとても高く「早急に個別対応が必要だ」とされている。しかし学校は個別対応をしなかった。
 さらに自殺する約2週間前に実施されたアンケートで、児童は「いじわるされたりぬすまれたりしていやになっててんこうをしようかなっと思っている」と記していた。しかし児童との面談などで、事実確認をしていなかった。
 学校側は児童のいじめ行為を確認しておきながら「トラブル」と軽視し、心理検査の結果を受けての対処もせず、アンケートの確認も「これを放置していた」(報告書)ことになる。
 児童は何度もSOS(救難信号)を発信していたのだ。それを学校側は見逃し、放置した。報告書は「適時・適切に対応がなされていれば、児童に対するいじめを相当程度減少させ(中略)事故の発生を防止し得た蓋然(がいぜん)性は、十分に認められる」と結論づけた。極めて妥当だ。
 報告書では事故後の学校や教委の対応も批判した。学校側が自殺の原因をいじめではなく「家庭での出来事」との認識を示していたことを挙げ「遺族に寄り添わず保身を続けた」と厳しく批判した。さらに教委についても「同校を守ることに腐心していた」と指摘した。結果的に責任回避に走った学校と教委の対応は残念でならない。
 いじめ防止対策は、被害児童の救済を最優先に考える必要がある。答申を無にしないためにも、いじめを見逃さないよう早期発見、早期対処に全力を挙げる必要がある。