長時間労働を減らし健康な状態で働ける社会の実現につながるだろうか。

 政府は今国会の重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を閣議決定した。長時間労働を是正する残業規制や、非正規労働者の処遇改善を盛り込む一方、労働時間規制の対象とならない「高度プロフェッショナル制度」を創設する。
 高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上で高度な専門的知識を必要とする業務に従事する労働者が対象となる。
 経済界は「時間に縛られない働き方ができる」と主張している。しかし、労働時間の上限を原則1日8時間、週40時間などとする規制が適用されなくなる。残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が支払われず、長時間労働を助長することになりかねない。実態は「残業代ゼロ制度」であり、過労死の温床になると懸念されている。
 対象業務は「金融ディーラーや経営コンサルタントなどを想定」している。しかし「など」と記述しているため、なし崩し的に拡大され年収の上限も下がる可能性がある。
 残業規制や待遇格差の改善と抱き合わせにせず、働き方改革関連法案から切り離して削除すべきだ。
 残業時間の抑制について法案は、年間720時間とし、繁忙期は月100時間未満、2~6カ月平均で80時間以内とした。720時間には休日に出勤した時間を含まないため最長で年960時間の残業が可能になる。
 労災認定の基準となる「過労死ライン」ぎりぎりである。長時間労働の抑制になっていない。誰のための改革なのか。上限規制を厳しくする必要がある。自動車運転業と建設業、医師は適用を5年間猶予しているが、例外なく適用すべきではないか。
 終業から翌日の始業までに一定の時間を置く勤務間インターバル制度について法案は「一定時間の休息時間の確保」を求める努力規定となっている。努力ではなく、企業側に具体的な時間の確保を義務化すべきである。
 安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と強調してきたが、法案作成の前提となった厚生労働省調査で2月に不適切なデータ処理や異常値が相次いで発覚した。働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量制の適用業種拡大が、削除に追い込まれた。閣議決定も当初予定の2月後半からずれ込んだ。
 共同通信社が3月31日、4月1日の両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、働き方改革関連法案について、今国会で成立させるべきかの問いでは「必要はない」が69・9%に対し「成立させるべきだ」は18・5%にとどまっている。
 長時間労働に歯止めをかける規制強化は急ぎたいが、国民は与野党による熟議を望んでいる。



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